第6節、リベラル・デモクラシーへ

 

 世界の近現代史の歩みは、リベラル・デモクラシーに向かう進歩の歴史として総括できるでしょうか。二十世紀になって国際共産主義運動が台頭し、それに対抗してファシズム勢力が伸長しました。リベラル・デモクラシーは、帝国主義的な性格を示しながらも、第二次世界大戦と戦後冷戦を通して軍事的・政治的に左右の全体主義を克服したと言えます。

 主に発展途上国に見られた右翼的な軍部独裁権力も、リベラル・デモクラシーに移行する条件整備に必要だという消極的な理窟で、支配の正当化を主張せざるを得ませんでした。リベラル・デモクラシーの実現を求める各国人民の運動は、最終的な勝利を遂げるまで粘り強く展開され、どんな専制国家でも、恐怖独裁政権でもいつかは打倒されるか、自らリベラル・デモクラシーの正当性を認めて軟化するしかないのです。その意味では確かに現代の歴史は、国家レベルではリベラル・デモクラシーを目指していると言えるでしょう。

 フクヤマは「リベラル・デモクラシーの世界的な広がり」を表で一目瞭然に示しています。それによりますと、 1790年3国、1848年5国、1900年13国、 1919年25国、1940年13国、1960年36国、1975年30国、1990年61国です。このようにリベラル・デモクラシー諸国数は短期的には減少することはあっても、長期的には明らかに増大しつつあるのです。

  リベラル・デモクラシーには幾つかの要素があります。・先ず「法の支配」の原理です。・そして基本的人権の尊重が挙げられます。・専制権力の出現を防ぐための権力分立制の主張も大切です。・そしてそれが民主主義であるためには普通選挙権の主張が不可欠です。この四つのどれが欠けていてもリベラル・デモクラシーとは言えません。 その上、フクシマは・自由主義経済を挙げて、リベラル・デモクラシーの成長発展は、その伴侶ともいえる経済的自由主義の成長とあいまっていると指摘しています。

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