やすいゆたか短歌集一〇一〜二〇〇

日食ショーに寄せて
一〇一 君見ずや世話になりたる日月が心づくしのダイヤリングを

十二月五日(金)
スーパー狂言『王様と恐竜』に寄せて
一〇二 某は神かもしれぬとトットラー、力に溺れ己失う
一〇三 世の中にこれで買えないものはなし、金を抱きてトットラー微笑む
一〇四 文句あるそれなら一発お見舞いと、ごきげんトットラ―水爆撫ぜ撫で
一〇五 結局は、勝てば官軍その後で正義はもじもじついてくる
一〇六 水爆とカネさえあれば大丈夫,正義の理屈はどうとでもなる
一〇七 正義持つ国に逆らう国あらばうちてしやまん正義のために
一〇八 一週間あれば済みます爆撃は、敵の心(しん)つくピンポイントで
一〇九 探しても見付からぬのは何ゆえか、見付からぬよう隠したるゆえ
一一〇 曖昧で言挙げせぬは月の国、されど出します国際貢献
一一一 人間は恐竜なるか現し世の、破壊し尽くし、仲間食い合う
自衛隊のイラク派遣に寄せて
一一二 米兵もエスケープする戦場になどて出かける自衛の隊員

十二月六日(土)
便秘に寄せて
一一三 このウンチ身を捩じらせて気張り出すその力あらばなお一日を

十二月七日(日)
昨夜忘年会での梅原猛
一一四 驚けリ我に代わりて歌詠める人は君だけ御大破顔

十二月八日(月)
法隆寺と死の原理
一一五 死を意味す、偶数で建てるその理由、怨霊封じ、他に何ぞや
薬師如来像と釈迦三尊像
一一六 釈迦なれど僧衣まとわずおわします、その本心は太子祀れり
極楽往生の場所
一一七 いでまじき閉じ込め祀る御寺こそ御仏います往生楽土よ

十二月九日(火)
夢殿救世観音像の謎
一一八 太子骨持てる観音厨子の中布巻かれたり五百ヤードの
怨霊の狂乱の舞
一一九 狂乱の舞を舞たる聖霊会時をはじきて太子現る
「パース『人間記号論の試み』について」に寄せて
ホッブズの意義と限界
一二〇 集団を人と捉えたホッブズもそこに事物は加えざりしか
身体主義的人間観の克服
一二一 人間をその身体に定めたる人の定めに挑み得るかは
パース『人間記号論の試み』の画期的意義
一二二 同義だと人と記号を結びたるイコールの文字輝けるかも
一二三 考えるプロセスがある、その外に考える我あるのではなく。
一二四 ものありてものを指すのが記号なり。記号の過程が思考なりけり。
一二五 思考するそのプロセスが人ならば、人は記号とパースいうなり。
一二六 経験に現れるのが物ならば、物なくしては経験もなし
一二七 真理とは、知りたる意識と実在が一致すること科学なるかな
一二八 物ありて姿現わすそのことと思考すること一つなるかな。

十二月十一日(木)
柿本人麿も怨霊だった?
一二九 歌聖よと敬われたる人麻呂が崇りを起こす怨み霊とは

十二月十ニ日(金)
斎藤茂吉と賀茂真淵
一三〇 人麻呂の籠もれる思いを明かさなむ、茂吉・真淵も弾け散るらむ
鴨山を求めて
一三一 「高山」とその一言で決めたるに「磐根」のみではこころ落ちざり
五首一組の哀歌−人麻呂の水刑
一三二 潮引きに大きな岩に縛られて、潮満ちくれば首隠るかも

十二月十三日(土)
柿本人麿の地位と正史の記載問題
一三三 何故に人麻呂「死」とは記されぬ、正三位なら「薨」なりぬべし
一三四 刑死ならたとえ三位に列なれど、位奪われ、「死」と記されぬ
ヒトがサルで、サルがヒトである。
一三五 人麻呂よお前はなんと人でなし、サルと名乗りて去るにしかずや

十二月十五日(月)
一三六 何時の日か朝日歌壇に吾歌が載せられるなど夢のまた夢
フセイン元大統領拘束の知らせに寄せて
一三七 ただ一人追い詰められて穴の中暗闇見つめ炎念(おも)ふや

十二月十六日(火)
妻の五十八歳の誕生日に寄せて
一三八 わが父が遺せし書の道引継ぎて輝ける妻、誇らしきかな

十二月十七日(水)
『水底の歌』と梅原哲学
一三九 人麻呂は怨霊として働きて和歌を文化の華とはなせり

十二月十八日(木)
髪長姫伝説
一四〇 霊験で得たる黒髪長けれどその幸せは短かけるかも
首皇子と安宿媛
一四一 君がため惜からざらし命なり胸焦がれたる恋にはあらねど

十二月十九日(金)
持統天皇の心の闇
一四二 すめろぎの心の闇をたれか知る時を盗めりかの人こそは
中継ぎの女帝たち 
一四三 天皇(すめろぎ)は蘇りしか燦ざめき、?野とみまごう阿閉の皇女

十二月二十日(土)
聖武天皇の逃避行
一四四 御仏の国土となさむこの国は、朕(わ)が意を写す皇国(すめらみくに)ぞ
孝謙上皇と道鏡ー聖と俗のアンビバレンツー
一四五 命賭け聖きを汚し奉る孤独地獄の君救うべく
梅原猛の縄文文化論 1母なる縄文文化 
一四六 わが母がわれを生みにし東北に還りて偲ぶ縄文の時
2アイヌ学の師、藤村久和との出会い 
一四七 その人はコタンのアイヌに成り切りて霊の往還あつく語りき
3アイヌ語と縄文語
一四八 アイヌ語に縄文の日の言の葉の名残偲ばむ忘却のむこう

十二月二十一(日)
4イオマンテと往還の思想 
一四九 満月にマレプト送るかがり火よ何時の日にかまた帰り来よ

十二月二十三(火)
穴の中の哲学者―「吾輩はムツゴロウである」第一章
一五〇 ムツゴロウその名で呼ばれし人なれど声もあげずに見殺しきなり
一五一 夢の中ムツゴロウにぞなりたるか夢の中にて梅原なりや
一五二 浄き国入らむがためにムツゴロウ惜しまず棄てしか美大なる身を

十二月二十八日(日)
5縄文土偶の謎 
一五三 子を孕み身罷りし女傍らに瞳孔開けり土偶寄り添う

二〇〇四年 元旦(木)
一五四 暗雲の迫れるごとき新年に我は身構え伸びむと願う
6真脇遺跡とイルカのイオマンテ 
一五五 御柱を巡りまぐわひ霊送る真脇の浜のイオマンテ幻視(み)ゆ
7異界に送るものー火―
一五六 霊送り霊迎えたるかがり火よ哀しみ燃やし命謳(うた)ふや
8鳥と共に海を渡れ 
一五七 魂は鳥となりて海渡りニライカナイに夢を結ぶや
9熊は果たしてあの世で人間の姿をしているか
一五八 霊が皆人の姿をせしならば異界はこの世と似ても似つかぬ
10アイヌと縄文人の宗教観 
一五九 死して後行く世界をば何と見た霊ばかりなる世界なりしや
11往還の思想から二種回向論へ
一六〇 異界との霊の往還包みつつ命の循環解き明かしけり
梅原猛の哀しみ 
一六一 信仰はおさえ切れない哀しみが夢の姿をつくりしものか
法然の出家
一六二 叡山に入山決まる少年に父は頼めりわが身の菩提
観想念仏か称名念仏か 
一六三 万巻の経を読めども甲斐無きや南無阿弥陀仏の六文字にしかず
仏の本願に望むれば
一六四 御仏の姿を観るが修行では南無阿弥陀仏で民は救えど

一月三日(土)
民衆の信仰として
一六五 煩悩に悶せる衆生(たみ)を救ふには弥陀の願ひに頼るにしかずや
「専修念仏」の問題点
一六六 恐ろしき教えならずや念仏は行も経も坊主も要らぬ
叡山と興福寺の法然弾劾
一六七 称名の道を択ばば叡山も南都の寺も露と消えなむ
安楽・住蓮事件
一六八 念仏を唱えしゆえに殺さるるこれに優れる喜び無きかは
悪人正機説と女人往生論
一六九 いとほしき女(ひと)の最期は看取らねど同じ蓮にて生まれまほしや

一月四日(日)
一七〇 哲学の生の現場を見せむとてホームページに網張りてみる
一七一 人間の問に魅せられ四十年何故人間か自問自答す

一月五日(月)
第十一章『湖の伝説』母の大きな手
一七二 草麻生を抱きし母の大きな手、その足元に斃れし白鳥
生みの母の記憶
一七三 生母への想いを消せりひたすらに節子の愛と死芸術見つめて
物語絵の芸術性
一七四 異なれる時を一つに構成す物語絵は時をはじけり
田鶴来
一七五 射落とした鶴の骸に首二つ、夫の首を抱きて飛びしや
三井の晩鐘
一七六 いとし子に目玉与えしその母は池の底はひ晩鐘を聴く
鷺の恩返し
一七七 命賭け恩を返せし鷺ならば無力なれども想いとどけり
死して生きる
一七八 命賭け事を行う意気なくば人の心に届くまじきを
花折峠
一七九 哀しみを突き抜けてこそたどり着く涅槃の死の絵されどのぞみを
紙芝居『雷のいない村』
一八〇 草麻生に愛と勇気を伝えたる節子に重なる千代の哀しみ
母への回帰と信仰の変化
一八一 亡き母を取り戻したき思いなお激しくなりぬ熟してもなお
「専修念仏」から「二種回向」へ
一八二 親鸞の哀しみなるはそもなんぞそこから出でたる二種回向かな

一月六日(火)
第十二章梅原猛の『ヤマトタケル』
スーパー歌舞伎の誕生
一八三 けれんにて心捉える歌舞伎にも胸迫り来る金のせりふを
梅原猛とヤマトタケル
一八四 猛こそタケルに似しやただ一人権威に挑みてひるむことなし
ヤマトタケルの時代
一八五 大王にまつろはぬ民数あれど草薙の剣たむけやはせむ
小碓命の兄殺し
一八六 兄殺し命をかけて尽くしたるその真心を父よ知らじな
小碓命、女装して、熊襲タケルを倒す
一八七 タケルなる強き男を倒すには弱き女子に成りて虚をつく
戯曲ではカットされた出雲タケル征伐
一八八 友と呼び木刀与えてだまし討ち父王の嘘皇子も受継ぐ

一月七日(水)
小碓命の生還と蝦夷征伐命令
一八九 兜脱ぎくつろぐ暇もなきものか、蝦夷討てとは死ねと言うごと
草薙剣
一九〇 草薙の剣が皇子を呼び寄せて、荒ぶる舞いまふヤマトタケルの
倭の論理と蝦夷の論理
一九一 戦にてたとひこの身は朽ちるとも山野を守る心朽ちまじ

一月八日(木)
滅ぼされた側の論理
一九二 森壊し、海を汚して拓け行く、文明の果てに瓦礫の山あり
弟橘姫の入水
一九三 燃ゆる火の恋にしあらば君が為吾が命さえ捧げまほしを
襲の裾に月立ちにけり
一九四 血のにじむ想い重ねて君待ちぬ裳の裾にまで色にいでしか             
嬢子の床の辺に
一九五 まぐわひの嬢子の床はめくるめく剣忘れて山にむかいぬ
息吹山の山神
一九六 積年の恨みの的に山神は身を弾にして砕け散るなり
大和し美し
一九七 美しき大和の国へ帰らばや雲立ち上るは吾家の方や
更に天翔りて
一九八 白鳥は更に何処に天翔ける、その後追いて嬢子かけるや
第十三章『オオクニヌシ』 平和憲法とオオクニヌシ
一九九 丸腰の国をつくりて滅ぼさるそは罪なりや譽なりしか
因幡の白兎
二〇〇 傷負える兎たすけてオオナムチ因幡の国の君となりしが

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