やすいゆたか短歌集二〇一〜三〇〇


一月九日(金)
オオナムチの死と復活
二〇一 飛躍して強くなりけりオオナムチ、死にうちかちて蘇りし後
黄泉の国のオオナムチ
二〇二 スサノオの髭を柱に括りつけ逃げ出しにけり、黄泉の国から

一月十日(土)
オオクニヌシの誕生
二〇三 大いなる和の国つくらむもろともに、愚かなる吾助けよもろびと
葦原色許男
二〇四 醜男が皺を重ねて磨かれて呼ばれけるかな葦原色許男
スクナヒコナと平和国家建設
二〇五 国破れ海を渡りし皇子なれば、平和で豊な国築きたし
建国三十年記念式典
二〇六 寿ぎの杯上げん肇国の三十路の年の栄えの式なり
ヤガミヒメとの再会
二〇七 純愛の想いは消えず永久(とこしえ)に吾をこがるや初恋の女(ひと)
国譲りの神話
二〇八 豊なる国を築けるそのあまり守りの備え緩みたるかな
出雲大社の建立
二〇九 怨霊を鎮める為に社建て守りの神と祀りけるかも

一月十三日(火)
二一〇 一合の真澄を夫婦でわけて飲み、仕事残して眠りたるかな

一月十四日(水)
陽明学
二一一 庭前(にわさき)の竹の切先にらめども理は現れぬ七日経てども
二一二 義を生きて毒蛇の獄に繋がれど挫けぬ心に理は見出せリ
ムツゴロウ
二一三 贖いのクロスに骸括りつけ許しを乞うやムツゴロウ教
二一四 珪藻を食べて生きたりムツゴロウ何故ありて刑せらるるや
ヘーゲル、即自・対自・即且対自
二一五 生まれでて心のままに生きたれど己知らねば即自なりけり
二一六 挫折して己を問いて悶えたる、その姿こそ対自なりけり
二一七 世の中で己を生かす道知りて自由に生けるは即且対自か
ヘーゲル弁証法、種の例
二一八 種なれど種のままにて終りなば種も仕掛けもあらぬなりけり
二一九 種なれば己の中に種ならぬ否定宿せり、それで芽が出る
二二〇 芽の中に種と否定を保ちたり、それ故にこそ終に種なり
二二一 始まりも終りも同じ種なりき、端緒に還りて円環を成す

一月十九日(月)
第十四章 ギルガメシュ』戯曲『ギルガメシュ』の文学性
二二二 文明と命の意味を問い直しギルガメッシュは今日も悶えり
三分の二が神、三分の一が人間
二二三 大いなる命の声に我忘れ、発情するごと筆をとる人
エンキドゥの誕生 
二二四エンキドゥ、奢れる君と戦いて人の力の限り明かせよ
奥処を開き、息を捕らえよ
二二五 獣なる男を捕らえて人とする役目になうは女にしかずや
エンキドゥ対ギルガメシュ
二二六 戦いに疲れて男は座り込み涙流して抱き合ひき
森の神フンババ
二二七 今日もまたギルガメシュとなりフンババを殺し殺して命削れリ
森の戦い
二二八 森の木と獣たちとの敵となり戦い挑みぬ命のもとに

一月二十ニ日(木)
神殺しの罪
二二九 神を生むその心にぞ神殺す心潜めり人の性(さが)かは

一月二十三日(金)
ギルガメシュの旅立ち
二三〇 吾が愛しエンキドゥは土くれやそが定めなり吾また同じや

一月二十四日(土)
死者の国にて
二三一 攻め取りてたとひ善政おこなへどその民草の怨みかさぬる
父母の死霊との出会い
二三二 ゆるされぬその恋証し生まれこぬ吾は背負うや不孝の罪を
エンキドゥは恨んでいた
二三三 死に人の霊の世界をさまよひて人の心の沼の底知る
不老不死の妙薬
二三四 悪魔にも神にも勝ちしヒーローも太刀打ちできぬは眠気なるかな

一月二十五日(日)
ギルガメシュ王の帰還
二三五 死霊住む果てなる国より還りきて神にわびつつ命はてなむ
多忙とスランプで歌が詠めない日が続く

二月十ニ日(木)
『おようの尼』あらすじ
二三六 尼なれど世の荒波を渡るには金にも色にも欲(おも)ひつきまじ
おようの尼の恋
二三七 還暦を過ぎて余生となりぬとも生きる証しぞ燃ゆる想いは
おようと猛の養母
二三八 梅原におようと俊はタブルやと尋ねてみると大爆笑なり

三月二十七日(土)
終章 人類哲学の創造へ
二三九 大本の命の環にぞ還らなむ、光輝く創造の海へ
事的世界観・事的人間
二四〇 各刹那命はじけて砕け散るそのインパクト命また生む
二四一 梅原の存在自体事件なり、ワクワク待ちぬ次は何かと
感情による歴史認識
二四二 感情を入れ込んでみてその人の苦しみ迫ればリアリティあり
循環の哲学
二四三 大いなる廻り廻れる命の環彼方の岸を含みて廻れや 
共生の哲学
二四四 共に生き、共に栄ゆるそのために、共に苦しむ心忘れめ
宗教的対話
二四五 大いなる命の底にまばゆくも愛の光はさしきたるかな
和の論理
二四六 お互いに凡夫なれども智恵集め力合わせて稔り豊かに

四月五日(月)
青年期の課題と自己形成
二四七 十七の吾は未来を指差して吾がものなりと豪語したりや
欲求・自我防衛機制
二四八 無意識に自分を守るそのためについしてしまう哀しき性かな
性格・生き方
二四九 奥底で天使と悪魔バトルする心の修羅は知られまじきや
「倫理」と「哲学」の意味
二五〇 輪になりて生きる理(ことわり)示したる古今の人と苦悩分かたむ
二五一 無知なれど真求めるパトスの火ドクサ燃やしてスタートに立つ

四月八日(木)
ミュトス(神話)からロゴス(論理)へ
二五二 人の道踏み外してぞ見据えたるその闇こそは神も侵せじ
ミレトス学派
二五三 何処より来りしものぞわが命、いずこに還り、廻り廻るや
調和と闘争
二五四 戦いか調和かいずれ原理なる議論戦い調和せざるや
有るものは有り、有らぬものは有らぬ
二五六 有るものは確かに有り、有らぬもの確かにあらねど、その帰結とは
四元論とアトム論
二五七 コスモスはアトムとケノンそれのみか意味・価値・目的いずくにあらむ

四月一〇日
ソフィスト
二五八 物事の真は何と問うたれば人それぞれと答えしは誰
二五九 たとへ身ははかなき露と消ゆるとも遺せし文化(もの)に命燃ゆるや
二六〇 崩れゆく高層ビルの姿こそ、人間の今、断末魔かな
二六一 亡父(ちち)の書に今も命は躍りたる、書こそ父の命なりしか

四月一五日(木)
ソクラテス
二六二 無知の知を生むは問答産婆術鞭の血よりも苦しき術かな
プラトン
二六三 哲人が理想の旗を振りかざしポリス導く王となれかし
二六四 予め頭の中に知の大樹ありて始めてものを知れるや

四月一七日(土)
天地創造と神の言葉 
二六五 闇照らす命のロゴス紡ぎ出し神は造れり愛のコスモス
光と闇  
二六六 存在の底にありしはアガペーか愛に生きてぞ命輝く
神の為の人間、人間の為の神 
二六七 人間を造りし神を造りしは人にあらずや神にあらずや 
二六八 人間を造りし神が愛ならば人間の為あるが喜び

四月一八日(日)
アリストテレス1エイドスとヒュレー
二六九 青年は未来を宿すデュナミスか、己を信じて、学べや学べ
アリストテレス2 徳と幸福
二七〇 幸せに生きる人なり何事も行為自体を楽しむ人は
アリストテレス3 ポリス的動物と正義論
二七二 相議して作りし法を守り抜く、そのことなしに人間もなし
ソフォス(賢人)の知
二七三 樽の中住める棲家は狭けれど心は広き足るを知りなば
エピクロス学派―パンと水の快楽
二七四 パンと水楽しき語らいそれだけで肉や魚は要らざるものを

四月二四日(土)
ストア派―禁欲主義と自然法思想の源流
二七五 大いなる命と理性解き明かすストアの思想人よ忘るな

四月二五日(日)
エコロジーの問題 
二七六 山愁い海哀しむやこの胸に溢る嘆きよ天地の心
人間対動植物、そして魂の不滅について
二七七 塵ならば塵にかえりて元々か、生きてるだけで丸儲けかな 
エデンの園 
二七八 命なる智恵なる二木取り囲みエデンの園に時は淀めリ
中東紛争に触れて
二七九 崇めたる神に違いはなけれども和解は遠し、重なる怨みに
ユダヤ教
二八〇 万物を創りし神は唯一つその名告げまじ僕(しもべ)の躬(み)ゆえに
二八一 アブラハム、神は全地を約したり、イスラエルこそ栄光の民
二八二 土塊や獣を神と崇めたる冒涜の民撃ちてしやまむ
キリスト教
二八三 救われる為にトーラー守りたるその心根に罪は宿りぬ
二八四 聖霊を宿して悪霊払いたる技冴えわたりその名とどろく
二八五 人々の罪を背負いて贖罪のクロスにつけり蘇りしか
マルクスの人間論 労働本質論は棄てられたか
二八六 本質は内に住みたる抽象か関わりの中現捉えよ
疎外論の払拭について
二八七疎外論あるべき姿論じたり、歴史は生のせめぎあいかな

労働と疎外
二八八 労働は己の力物にして示したること喜ばしきや
二八九 対象の中に己を喪したり、働くことは疎外なりしか     
非有機的身体と人間的自然
二九〇 わが心天地の心と一つなり、天地は我の五体に近しや
キリスト教の成立
二九一 死に克ちて蘇りにし人の子は天に昇りぬ、再臨は何時(いつ)
二九二 いとし子をクロスにつけて示す愛、それに応えぬ人に裁きか
二九三 愛なくば山を動かす信仰も無に等しきや、神は愛なり
キリスト教の発展  
二九四 ペルソナは異にすれども父と子と聖霊なる神一つなるらし
『資本論』における価値ガレルテ論
二九五 労働が膠になりてとりついて物を価値だと誤たせしとは
『資本論』の人間観の限界
二九六 雇われて働く者のみ価値を生む、一点張りでは視界狭めり
二九七 人間は身体のみの存在か物の中にぞ己見出す

七月三日(土)
ベサリウス『人体構造論』
二九八 その中身ひらいてみればかわりなし人も獣も五臓六腑か
デカルト心身二元論
二九九 人のみぞ巧みに言葉あやつれり身体機械に魂足せりや
ホッブズ人間機械論                         
三〇〇 魂を置き入れずとも音声が記号となりて言葉生まれぬ


★目次に戻る