やすいゆたかの短歌集一〜一〇〇

全く不思議ですが睡眠中に歌が二つ、三つと突然浮びまして、それを書き留めました。ついでに今執筆中の小見出しに歌をつけていきました。ほんの二時間ぐらいにこれだけの歌を作れるなんて不思議ですね。

二〇〇三年十一月九日(日)未明より突然歌心興り詠める歌十五首
一 誰一人吾を信じる人ぞなき五彩を纏いてただ一人舞う
二 哲学の道といえどもつづれ折り今絶壁に懸ける綱なし
三 吾が弟子に吾が肉吾が血を食べさせて復活の道拓きし人ありや
四 鉄の腕電子の脳で生まれても背負いし苦悩人に優れる
五 人間も神が作りしロボならば、リヴァイアサンを人もつくらん
六 人間の問に答えは数あれど今この時の翼求めん
七 人間は思考なり人間は悲惨なり人間は交わりなり人間は範疇なり
 八 青春の甘きすっぱき疎外論一度捨てたが又拾いきぬ
九 物なれど人の交わりなしたれば人と認めてなんぞはばかる
十 他人様の労働の実を取り持ちてヒトははじめて人間となる
十一 滅び行く森の哀しみ誰か知る人の心は天地の心か
十二 考える事とは何か山海がその哀しみを語ることかな
十三 草薙の剣を置きて吾はなし氷雨に打たれ露と消えゆく
十四 突然に歌心湧きぬ朝ぼらけ有明の月を賞でてみんかな
十五 兼好をつくりみやびとけなしたる滅びの哀しみ知らざる人かな

梅原猛の生母千代の恋
十六 吾が恋は命を賭けしまこと道、躬(み)は滅びても子供(いのち)守らん
梅原猛の高校生の時の恋
十七 大君の辺にこそ死なめ益荒男は、吾は恋路に死なましものを

十一月十日(月)
十八 交換で人間となり言語生むその理は明かし得るかは
十九 人間を問いしこの道四十年めぐりめぐりて太極に立つ
二〇 猪も月のものさえみやびなる歌の道こそたのしかりけり
二一 切なくて涙あふるることもありわが身ひとりの犯にはあれど
二二 還暦も間近になりて歌心何故に興りぬ命咲せむ
ニ三 人の世に熱あれよとは語れども、躬のふがいなき胸塞がるる
二四 哀しみの涙の海を胸に秘め命の愛しさ語る人かな
二五 草麻生を抱きて立てるその母は命短く湖の祈り
二六 命さえ惜しからざらし恋故に生まれし吾も恋に死なまし

十一月十一日(火)
娘愛の三十歳の誕生日(十日)に寄せて
二七 クルクルと回りまわりて踊りたる愛しき姿今も夢見る
二八 一日に八コマこなし帰る日は疲れにまけて歌も湧かずや

十一月十二日(水)
二九 ルネサンス、ギリシア・ローマに憧れて咲き誇りたし人の悦び
三〇 モナリザの永久の微笑み投げかけてダ・ヴィンチはなお今を生き抜く
アルベルティ
三一 いたずらに時を空費するなかれ、人は仕事のために生まれぬ
エラスムス
三二 キリストの平和の教え忘れしか、鎧兜で先駆けし法王(きみ)。

十一月十三日(木)
マキャベリ
三三 君なれば狐の如くにずるくあれライオンの如く凶暴であれ
パスカル三首セット
三四 考えることで無限を知りしより、わが身の悲惨迫りておののく。
三五 無限にてわが身を包む宇宙をも吾の思考は包みて優れる
三六 宇宙(そら)よりも偉大な吾を吾が神(ちち)は見捨てたまわじ偉大なるゆえ
ルター免罪符反対
三七 免罪符買いて御国に入れるなら教会の力は神に代われリ
ルター『キリスト者の自由』
三八 信仰で救いを得たる者ならば救いのためにすることぞなき
三九 すぐれたる歌を詠まんとするなかれ、つたなく歌うが歌を生む要領(こつ)
梅原猛『ギルガメシュ』に寄せて
四〇 四足を二つ足にて立たせしは退屈しのぎの神の戯れ
四一 はてしなき天上にすむ神々を宮に閉じ込め奴となしたるや

十一月十四日(金)
『梅原猛―その哀しみと夢―』プロローグの小見出し寄せて
「嘘偽りのない社会」
四二 親と子にまさか偽りあろうとは、父が伯父にて叔父が父とは
トーテミズムと往還思想
四三 あの世では人のこの身が熊になり、あの世の熊がこの世で人かは

十一月十五日(土)
縄文時代のあの世霊界説への疑問
四四 さかさまの他にはこの世と変わりなきあの世といえど腹はすくのに
二五 草麻生を抱きて立てるその母の髪尖りたり湖の祈り(訂正)
あの世を含む生命の共生と循環
四五 大いなる命の輪にて共に生く、その理を胸に生かまし
一神教と多神教の対話の可能性
四六 一と多の溶け合いてこそ叶ひたる命の法(のり)に変わらぬものを
聖徳太子信仰の復興
四七 和の国の栄えの基示したる憂いの御霊嘆き聞かじや
宗教と道徳の教育
四八 命をも捧げし愛に護られし君が力に限りあらむや
第一章  梅原猛の生い立ち 野合の子
四九 病得て生めばわが身は朽ちるとも愛の誠の証し護らん
町の最後のダンナハン
五〇 内海町町の最後のダンナハン養父(ちち)の大きさ享けて花咲く
養母俊は小説家小栗風葉の妹だった
五一 風葉のやくざな暮らし語る養母(はは)春のときめき胸に響けり
梅原猛の神童伝説
五二 関取の足指だけで名を当てる神童の子の心淋しき
一人遊びの少年時代
五三 ただ一人野球将棋に籠もりたる生まれの秘密にふれまじたれも
秀才から文学青年へ
五四 魔につかれ小説書きに溺れたる才なきものを止められもせず
戦火の中の青春
五五 ますらおの美しき死に縁なきやゲートル巻けず剣でなぐられ

十一月十六日(日)
西田幾多郎の「死して生きる」
五六「死してこそ真に生きる」という真(まこと)、いかにはたらく時局の中で
高山岩男の『世界史の哲学』
五七 若き血を流して死なむそのために胸に抱けり『世界史の哲学』
大学に戻って
五八 戦より戻りて哲学せむからはなどて語らぬ己の言葉で
私の恋愛観ーその悲劇性についてー
五九 砕け散る恋ゆえにこそ我を知る燃ゆる想いは恋ならなくに
「死の哲学」を求めて
六〇 死を求め死の哲学に惹かれたるその奥底にタナトスの母
ベサリウス『人体構造論』
六一 獣とは体に違いなきものを如何でひらきし文明の扉
ベーコン 劇場のイドラ
六ニ 信じるな、いかに権威があろうとも、実験してみて確かめぬうち
デカルト 方法的懐疑
六三 疑いて疑いてなお疑えぬ疑っているこの我のみは

十一月十七日(月)
稲垣ふさとの結婚
六四 いかにして石鹸多く掴まんか夜を徹してのそれが問題
引用のない論文
六五 自らの闇のパトスに迫れるに権威(ひと)の言葉は借りまじきかな
希望の裏に不安はひそむ
六六 未来へと希望を託すその裏に不安は潜めりふがいなき躬(み)の
忍びよる憂愁と焦燥
六七 しのびよる憂いと焦り吾にあり確かな実り未だ遂げれず
存在の引き裂かれる痛み
六八 ありたいと願う吾とは程遠く引き裂かれたる存在の痛み
不安を眠らせるための三つの態度
六九 ニヒルなる素顔の上に被らせた笑顔の仮面肌に喰い込む
閉ざされた部屋・絶望
七〇 あの世へと望みをつなぐ術もなし、神無き時を生きる吾等は

十一月十九日(水)
絶望からの逃走の試み
七一 己ほど下らぬ奴は他になし犬に食われて死にたきものを
誠実に生きるとき絶望は必然である
七ニ絶望が生み出した虚無その上に物質的富(もの)を積み上げそれを神とす
「生と死の転換(ヘラクレイトスの断片をめぐって)」
七三 竜谷大極楽浄土に近かけれど念仏唱えて腹はふくれめ
我々はかのものらの死を生きる
七四 土と水、魂の火よ、めぐりめぐれよ、相手の死を生き
すみきった流転のロゴス
七五 すみきった流転のロゴスさとりなば土や水さえ命なりけり

十一月二十一日(金)
「笑いの哲学」から「日本文化論」へ
七六 生活はなるようになる、腹括り笑い飛ばせば力湧くなり
禅偏重の日本文化論
七七 西行の歌は禅より前に出ずその自然愛禅に劣るや 
和辻哲郎と天皇教
七八 祀る神無の主体なる天皇に、祀られてこそ神になるとは
丸山真男の宗教的痴呆
七九 大乗の教え背骨に通りたる否というまじ読まざるうちに 
『地獄の思想』はじめに
八〇 地獄こそ己が住処と悟りしかその心には涙の海あり
釈迦と六道輪廻
八一 釈迦牟仁は、無我の真理とサンサーラ、アンチノミーに苦悶したるか
天台智の思想
八二 わが心三千世界さまよいぬ三体円融もののあはれや
源信『往生要集』
ハ三 死してなお地獄の苦しみあらむとは死んでも死なぬ命なるかな
法然の専修称名念仏
八四 罪人の為こそござれ阿弥陀仏過ち悔やむも己卑下すな

十一月二十二日(土)
念仏為本から信心為本へ
八五 わが妻はわれを救える救世観音御身なしでは夜も寝られず
悪人正機説
八六 御仏に頼む心の切なれば悪人救うが弥陀の本願
自然法爾
八七 ひたすらに南無阿弥陀仏称ふれば現世地獄も弥陀の浄土か
「二種回向論」がなかった
八八 現身の地獄の苦しみ語れども後の世のこと思はざりしか
源氏物語の美学
八九 源氏にぞもののあはれはきわまれり三体円融大和心か
六条御息所の地獄
九〇 夢にだに思はざりしか汝が霊が恋敵(かたき)の首を締めに行くとは
阿修羅の世界ー平家物語ー
九一 六道のすべて巡りてたどり着く終の棲家のしずかなるかな
妄執の霊どもー世阿弥―
九二 打ちたれど響かぬものか綾鼓嘘で飾りてこころとてなき

十一月二十三日(日)
死への道行き
九三 道行の白き道こそまことなれ極楽浄土に続く道かな
宮沢賢治の修羅
九四 この人も賢治とともに歩めるか春と修羅との命の道を
太宰治の道化地獄
九五 命かけ酒に女に革命にのめりこめずに人が見えるか
『隠された十字架ー法隆寺論ー』怨霊信仰について
九六 怨霊の崇りをおそれ祀りたるその心根は和の精神(こころ)かは
梅原猛と怨霊信仰
九七 未生怨持ちて生まれし人故に時をはじくか怨霊の声
山背大兄皇子と入鹿殺害のシナリオ
九八 山背の仇討ちたりと入鹿首掲げし鎌足許すまじきや
死霊の復讐―鎌足の死―
九九 「打橋の集楽(つめ)の遊びに出でませ子」皇子よ行かまじ死霊の誘い
死霊の経典講読
一〇〇 経典を講読しつる僧の目に妖しき光宿りまつるや

     
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