プラグマティズム

.
                  1確信に至る「四つの方法」

第十五章 プラグマティズム

 

1確信に至る「四つの方法」
 

                        思い込み権威や理屈の巧みさは頼るべからず科学にしかずや
 

太郎:マルクス主義、実存主義ときたら次は@(       )ですね。これはアメリカ合衆国で起こったので、フロンティア精神と関係があるのですか。
 

花子:それはおおありでしょう。フロンティア精神の旺盛なアメリカ合衆国では,近代社会の諸矛盾に取り組む姿勢は実用的で合理的でしたからね。個々の社会矛盾を解決可能問題として立てて、その課題を最も効果的に解決する手段を求めたのです。

 

先生:カントは,道徳的な動機に基づくA(       )な態度を効果を重視するB(           )な態度より尊重しました。これに対してC(     )(18391914)は、道徳的な動機など確かめようがないので、科学的に論じても仕方がないと考えました。それにひきかえ、どのようなD(  )をとればどのようなE(  )があるかは、実証的に論じることができるので、科学的に有意味だとしたのです。それで自らの立場を「@(           )」としました。

 

太郎:それじゃあ、イギリス功利主義の延長上にとらえていいのですね。

 

花子:C(     )自身は利己主義的な利益追求主義に見える功利主義には反発していたのでしょう。あくまでも科学的な意味でD(  )とE(  )の関係を探求していたらしいですよ。

先生:ええ、それは言えますね。でも思想的な流れとしては、やはり功利主義のアメリカ版でしょう。彼は疑いや迷いから確信に至るには次の「四つの方法」があるとしました。
 

(1)「F(      )」−個人の願望や恣意が信念確定の決め手になります。人間はだれしも死にたくないと思っています。でもかつて何百億の人類も全て死にました。それでも永遠の生命を信じようとすれば、たとえいったん死んでも、また甦ったり、輪廻転生を繰り返すと考えたり、死後の世界が存在すると信じ込もうとします。

(2)「G(       )」−権威に対する忠誠が信念確定の決め手になります。ベーコンの「劇場のイドラ」はこれにあたります。権威がカリスマ性を帯びたり、それを信じないと権力的に抑圧されるような体制になっていますと、自分の安全の為に信じておくこ.とになります。

(3)「H(       )」一形而上学的な方法です。頭の中だけで論理一貫した理論を組み立てて,それを基準に現実を評価し,断罪する方法です。確かに論理的には欠陥がなく、正しく思われますが、実は実験・観察等できちんと検証されていない「机上の空論.」です。これは筋が通っていることが信念確定の決め手となっています。

(4)「I(       )」一同一条件の下では同一の結果に到達せざるを得ない科学的実験に基づく方法です。主観の認識が客観的な事物の諸性質と一致していることが信念確定の決め手なのです。パースが主張したのもこの方法です。


太郎:へえー、このぺ一スの「確信に至る四つの方法」は,べ一コンの「四つのイドラ」,即ち@種族のイドラ.A洞窟のイドラ.B市場のイドラ一C劇場のイドラと対比させて覚えておくと便利ですね。
 

@(    )〜I(     )に当てはまる語句を次から選択しなさい。
プラグマーティッシュ(実用的)   権威の方法   効果   プラグマティズム   先天的方法    プラクティッシュ(実践的)   科学的方法   パース   
固執の方法   行動

              2プラグマティズムの格率

    

                         パン食ひて肉の味がせぬのならパンを肉とは言わまじものを

 

花子:パースはプラグマティズムをどう定義していたのですか。

 

先生:「観念を明晰にする方法」という論文ではつぎのような「@(        )」を示しています。太郎君読んでください。

 

太郎:「あるA(  )の概念を明晰に捉えようとするならば、そのA(  )がどんなB(  )を、しかも行動と関係があるかもしれないと考えられるようなB(  )を及ぼすと考えられるか、ということを考察してみよ。そうすればこうしたB(  )についての概念は、そのA(  )についての概念と一致する。」

 

先生:この説明でキリスト教の聖餐式をたとえに使っているのです。聖餐式(せいさんしき)はキリスト教会で,キリストの肉であるC(  )とキリストの血である葡萄酒をいただく儀式です。キリストの肉体であるとされる教会の中での,キリストと信徒の合一の儀式なのです。しかしC(  )は味、形、色、舌触り、諸成分、その他どれをとってもキリストの肉とは思えません。葡萄酒も同様です。C(  )の味,,,舌触り,諸成分をなしていれば、だれもがこれはC(  )であり、キリストの肉ではないと分かる筈です。C(  )だと分かっていながら、無理にキリストの肉だと言い張るのは間違いです。ですからパースの場合は、D(       )との一致が真理なのです。C(  )をキリストの肉と見なして扱っておけば,宗教的儀式には都合がよいからという実用的B(  )だけから、「C(  )=キリストの肉」を真理と見なすような乱暴な事は決してしません。

 

花子:それじゃあキリスト教にとっては実用主義的ではありませんね。プラグマティズムといえば、何かD(       )や真理は棚上げにして、実用的であれば良いみたいな考え方のように思っていたのですが。

 

先生:その意味ではパースの場合は、科学的実験に基づきますから、ベーコンに近いですね。 ある概念例えば「猫」という概念の対象について様々な特徴が報告されますが、それらを観察や実験を通して確かめます。このようにテストによって真偽が確かめうる概念だけが有意味な概念なのです。この共同の確かめによって人々の「猫」についてのE(          )が、描という概念の意昧なのです。 この方法で人間という概念を確定しますと、人間はF(  )活動の連続であり、F(  )はG(  )に他ならないから、「人間はG(  )である」ことになりました。人間とは事物が他の事物を指し示す、H(         )のことだというわけです。

 

太郎:それは独特の人間論ですね。

 

先生:人間を身体的な枠内にとどめないで、事物の性質として捉え返しているわけですから、人間観におけるI(         )ですね。

 

@(    )〜I(     )に当てはまる語句を次から選択しなさい。
事物の知的性質  客観的実在  効果  思考 コペルニクス的転換  
一致した観念の総和  記号  パン  プラグマティズムの格率  対象


3.
根本的経験論

 

                       対象が事物と観念(ものとおもひ)に分かれたるそれ以前なる生そのまんまかな

 

太郎:「プラグマティスムの旗手」と呼ばれたのが@(    )(1842〜1910)ですね。彼は著書『A(         )』で「主観・客観の認識図式」を克服し、絶えず流動する意識の流れを「B(    )」と呼びまんだということですが、B(    )てどんな経験でしょう。

 

先生: C(        )に分かれる前の生の経験ですね。C(        )はB(    )を主観・客観の認識図式からD(        )したものに過ぎないとしたのです。

 

花子:そういう経験では認識内容と客観的事実が一致するのが真理だというパースのE(            )が通用しませんね。

 

先生:そうですね、既成の真理観を覆したので、@(    )の経験論はF(            )と呼ばれます。パースはジェームスがプラグマティズムなら,自分はもはやプラグマティズムではなくて、G(          )だ主張しました。それがややこしければ自分の立場をパース主義と呼ぶようにと言ったのです。

太郎:なるほどそれで真理は主観の判断と客観的事実の一致ではなくて、「H(         )。」とされたのですね。

 

先生:ええ、要するに概念や理論がそれを使って行う人間の行動に、有効に役立っておれぱ、それだけ真理性があるという立場なのです。『I(         )』では、神を信じる事による安心立命から神への信仰は有用であり、その限りで真理であるとされているのです。撤底的に経験に即するF(            )に立つなら、客観的実存としての神は倒錯的な存在で,あくまで神も宗教的な経験としてしか存在できない筈です。

@(    )〜I(     )に当てはまる語句を次から選択しなさい。
真理は有用性にあり  純粋経験  ジェームス  プラグマティシズム
根本的(ラディカル)経験論   宗教経験の諸様相   反省的に解釈
プラグマティズム   事物と観念   科学の方法

 

4道具主義的理性

 

                   セオリーも所詮は道具にあらざるや真理の不変に囚わるるはたれ

 

太郎:プラグマティズムの大成者は@(    )(18591952)ですね。彼は1919年に来日して講演したそうですね。そのときの講演をまとめたのが『A(     )』(1920)でしょう。どういう主旨だったのですが。

 

先生:彼は、 B(                )は問題解決のための仮説であり,「C(   )」であると捉えたのです。B(                )が妥当で価値があるかどうかは、C(    )とての有用性にあるのだと説いたのです。そこで彼のこの立場をD(      )と言います。

 

花子:なるほど、私たちが今日ぶつかっている問題の解決に何の役にも立たないようなC(    )として古くなったB(                )はもう必要ないというわけですね。ところが真理は不変だと思い込んでいるので、なかなか現実に即して, B(                )を組み換え発展させることができません。それではいけないということですね。

 

太郎:確かにマルクス主義者や実存主義にすれば、真理は自己のアイデンティティにかけて守り抜き、実現すべき目的なので、それを C(    )として捉えるのは冒涜と写ったでしょうね。

 

先生:ええ、マルクス主義者は革命的な生き方こそが目的で、実存主義者は主体性こそが問題ですからね。理論の有効性は二の次になりがちだっ

たのです。ただ理論がC(    )になってしまうと、効率性や便宜性が自己目的になって、目的のためには何をしても良いことにならないかという批判も生じます。

 

花子:でもそれは水掛け論でしょう。だってマルクス主義者こそ革命という目的のためなら暴力や戦争を選択するわけですし、実存主義者の主体的決断というのも、恐ろしいことを主体的に決断しかねないですからね。

 

太郎:全くその通りですね。結局理論の有効性や合理性は、マルクス主義や実存主義も追求せざるを得ないわけですから、だれもがが多少なりともプラグマティストたらざるを得ないといえますね。

 

先生:それは同感です。彼は,知性の役割について『E(            )』で興味深い分析を示しています、既成の習慣が円滑に機能して、人々がそれに対して上手く適応できている時には、F(         )を用いる必要はないのです。しかし障害にぶつかった際には、環境との安定した関係を回復しようとする衝動が現れます。これに刺激されて、知性は過去を振り返り、未来を展望して新しい条件のもとでの新しい習慣を作り出そうとします。この主体が「F(         )」です。「G(                                     )」という活動によって「H(      )」が創造されるのです。そしてこのH(      )の絶えざる成長こそが「I(   )」なのです。

 

@(    )〜I(     )に当てはまる語句を次から選択しなさい。
習慣衝動知性新しい習慣    道具主義(instrumentalism)   人間性と行為
善   知識・概念・理論   創造的知性   道具   人間性  哲学の改造
ジョン・デューイ

5民主主義と学校

                                                

                                                                学校は知識詰め込む場にあらで共に学べや地域の問題

 

太郎:デューイは@(    )をプラグマティズムの立場から基礎付けたのでしょう。

 

先生:彼は「A(                    )」のどれもが個々の行為を導く生活の道具であり,何が善であるかは人により時により異なるのだという「B(        )」の立場を表明しました。

 

花子:それからC(        )は社会改造の為のD(      )と協カを通して行われるものだとしましたね。

 

先生:ええ、彼のE(            )の立場は、ソ連のマカレンコの教育学とお互いに影響しあったようです。彼はF(    )を、社会の構成員全員が成長するために協力し合って、科学的に問題を解決する事だと捉えました。自由と平等だけでなく、G(            )の原理が重視されます。

 

太郎:デューイは、民主主義社会ではH(                      )自身が教育過程だと捉えています。ですから教育は問題を整理・系統付け,その解決方法を探究させ,その過程で知識と道徳を体得させるものですね。

 

先生:ええ、学校は,I(            )の場であり,決して暗記と試験によって受動的に学習する場ではないのです。このようにデューイは民主主義社会の形成の為の進歩的な教育思想を打ち出し,第2次大戦後の日本のJ        )に多大な影響を与えたのです。

 

@(    )〜J(     )に当てはまる語句を次から選択しなさい。
人間性を創造する過程   徳・快楽・幸福・人格の完成   教育の民主化  
価値多元論   寛容と同情   集団的な問題学習   民主主義の倫理  
民主主義の原理    集団主義教育    人間性の成長   集団的な実践

 

                                            

                                          第十五章 プラグマティズム 解答

1確信に至る「四つの方法」
@プラグマティズム  Aプラクティッシュ(実践的) Bプラグマーティッシュ(実用的)  Cパース D行動 E効果 F固執の方法  G権威の方法  H先天的方法 I科学的方法

2
プラグマティズムの格率
@プラグマティズムの格率  A対象  B効果  Cパン  D客観的実在  E一致した観念の総和  F思考  G記号  H事物の知的性質  Iコペルニクス的転換

3.
根本的経験論
@ジェームス  Aプラグマティズム  B純粋経験  C事物と観念  D反省的に解釈  E科学の方法  F根本的(ラディカル)経験論  Gプラグマティシズム  H真理は有用性にあり  I宗教経験の諸様相

4道具主義的理性
@ジョン・デューイ   A哲学の改造  B知識・概念・理論  C道具  D道具主義(instrumentalism)  E人間性と行為  F創造的知性  G習慣⇒衝動⇒知性⇒新しい習慣   H人間性  I善

5民主主義と学校
@民主主義の倫理  A徳・快楽・幸福・人格の完成  B価値多元論  C人間性の成長   D集団的な実践  E集団主義教育  F民主主義の原理  G寛容と同情  H人間性を創造する過程  I集団的な問題学習  J教育の民主化

 

 第16章に続く   第14章 実存主義に戻る  目次に戻る