源流思想 一神教
中東紛争にふれて
崇めたる神に違いはなけれども和解は遠し、重なる怨みに
先生:最近日本の思想界では一神教の評判はすこぶる悪くなっています。
太郎:9.11の@( )以来、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教など一神教の間での紛争がますます激しくなっていますからね。
花子:別に教義の違いが気に入らないので争っているのではなくて、領土問題でしょう。
先生:ええ、元々ユダヤ教の神A( )がキリスト教の父なる神でもありますし、イスラム教のB( )は呼び名が違うだけで同じ神なのです。同じ神を崇拝しているので、互いに尊重しあうこともできるわけです。でも同じ神を信仰しているだけに正統性をめぐる近親憎悪も激しくなります。ところが第二次世界大戦後、ユダヤ人が二千年近く離れていたパレスチナに戻ってイスラエルという国を建てました。そこで暮らしていたアラブ人とトラブルになって、アラブとイスラエルが四度も戦争し、その度にイスラエルが勝って、強大化し、それがまたトラブルの原因になっているのです。
太郎:それがどうしてアメリカやイギリスまで関わってイラクに侵攻することになったのですか。
先生:第二次大戦中にユダヤ人がC( )に数百万人が大虐殺されてこともあり、米英がユダヤ人のイスラエル建国の後ろ盾になったのです。イラクがフセインの独裁体制をとったのは、強力な中央集権にして軍事大国化してアラブ世界を統合し、イスラエルに対抗するためです。それでD( )の開発やそれが国際テロ組織に流れるのを恐れて米英が侵攻したということです。
花子:アラブ人にすれば米英などの狙いはイスラエルを建国させて中東に紛争を惹き起こし、アラブを弱体化して、中東の石油資源を狙っていると受け止めていたのでしょう。
先生:問題はユダヤ人はユダヤ教という宗教でまとまっている民族なので、パレスチナのアラブ人と一緒に無宗教の近代国家を作れないことですね。
太郎:これだけアラブ人に嫌がれるのなら、アメリカにでもイスラエルを作ったらいいのにと思いませんか。
先生:それが八方うまく収まる提案だという考えもありますが、ユダヤ人にとっては、昔E( )と呼ばれたパレスチナは「F( )」ということで、神から与えられた特別の土地なのです。パレスチナに建国しないなら、ユダヤ教を捨てることになると思いつめているわけです。
花子:アラブ人もユダヤ人の資本と技術を中東に呼び寄せて、中東の開発に利用すれば、共存共栄できる筈ですよね。
太郎:だから、いざ戦争になってしまうと憎悪の連鎖になるのです。元々一神教は、自分の宗派以外は唯一神を冒涜していることになりますので、神のためにも許せないという気持になるのでしょう。
先生:その通りですが、いつまでも戦争ばかりしていますと、それこそG( )になってしまいますし、地球環境問題などで世界が協力することもできません。人類の絶滅に繋がる恐れもあります。ですから落としどころとして花子さんの観点で説得すべきですね。そのためには国連本部を聖都H( )に置き、国連がイスラエルを管理して、イスラエルを非武装化するぐらいの大胆な提案が必要でしょう。
花子:聖都H( )にはヘブライ王国の時代からヤハウェの神殿跡があって、ユダヤ教の中心地だというのはよくわかります。
太郎:イエスはH( )神殿で最後の週に説教をし、民衆に告発され、ユダヤの最高法院から死刑にするようにローマの総督に要求され結局、神殿の近くのゴルゴダの丘で十字架刑にかけられ、三日目にI( )したわけです。でもイスラム教の聖地というのは何故ですか。
先生:教祖J( )はメッカで死んだのですが、その魂はH( )神殿までやってきて、そこから昇天したとされています。
問 上の( @ )〜( I )に下の語群から適当な語句を選んで記入しなさい。
エルサレム ヤハウェ アッラー ムハンマド 大量破壊兵器 同時多発テロ カナン
約束の土地 ナチス ハルマゲドン 復活
ユダヤ教 唯一絶対の超越神
万物を創りし神は唯一つその名告げまじ僕(しもべ)の躬(み)ゆえに
アブラハム神は全地を約したりイスラエルこそ栄光の民
土塊や獣を神と崇めたる冒涜の民撃ちてしやまむ
先生:ユダヤ教の聖典は「@( )」だけどそれは「諸書」という意味です。伝承されてきた聖典を集めたものということですね。その中には「神の子たち」や神の子と人の娘の合いの子もいて、A( )の神とは矛盾している個所もあります。それにエデンの園のB( )とC( )は大木信仰の名残ですし、神の山ホレブ(シナイ山)の山岳信仰、聖石信仰などの名残もあります。
花子:蛇に唆されて禁断のC( )から木の実をとって食べたのが最初の罪で、それでエデンの園から追放されたというお話ですね。
太郎:どうして一神教になったのですか。
先生:それは大いなる謎ですね。多神教の中の主神が唯一神に成ったとすれば論理的ですが、ユダヤ教の場合はヘブル人の族長の守り神信仰が先ずありまして、それだけを祭る単一神信仰をしていたのです。と言いますのは、彼らは自分の土地をもたない寄留民でして、河や雷や大地といった自然が自分たちを守ってくれるとは思えなかったのです。部族の団結という「D( )」だけが守り神だということです。
花子:神は不死という絶対的な永遠な存在でしょう。その神がたくさんあるというのは神の絶対性を損ねることになるので、不滅・不動・不変なものは唯一つということで一神教になったと思います。ほらパルメニデスが論証したでしょう。
先生:それはギリシアやインドのような多神教の発達していたところの話ですね。エジプトに寄留していた頃へブル人が増えすぎて、脅威に感じたファラオが、へブル人を奴隷的に酷使したので、預言者E( )に率いられてエジプトを脱出しました。ファラオはこれを阻止しようとして弾圧します。エジプトの神との御技を比べあって、ヤハウェの神が勝利します。その一番さいごが「F( )」という罰で、ヤハウェはヘブライ人の家の壁に羊の血でヘブライのマークを書かせておいて、その家は過ぎ越し、エジプト人の家の長子を皆殺しにしたのです。
太郎:それでエジプト脱出を認められますが、思い直したファラオ軍が追いかけてきて、危ない所を、モーセは紅海を真っ二つにして、その底に道を作って逃げます。追いかけてきたファラオ軍は紅海に呑まれて退却するのでしたね。
先生:昔の映画『G( )』ではそうなっていましたね。実はあれは紅海ではなくて地中海の中に遠浅の道ができてそこを逃げたのが正しいらしいので、現在の『バイブル』では訂正されています。モーセはシナイ半島の神の山ホレブで神から大切なものを授かります。
花子:『G( )』でしょう。これはとても重要だから十回読んで暗記します。(笑い)
「一、あなたは私の他になにものも神としてはならない。」これはH( )信仰ですね。
先生:ええ、そう解釈しておくといいてしょう。
太郎:ということは別の解釈も可能ですか?
先生:ヤハウェだけを祭って、他の神々は祭らないという単一神信仰とも解釈できます。
花子:「二、あなたは自分のために刻んだ像を造ってはならない。」これはI( )の禁止ですね。
先生:これを広く解釈しますと彫刻一般の禁止にも受け取れますね。ですから元々ユダヤ教やイスラム教では抽象的な文様をあしらったりはしても動物や人間の像は作らないようにしていました。
太郎:キリスト教は、その点ルーズというか、マリア像やキリスト像や聖人像の崇拝がカトリックではさかんですね。
花子:「三、あなたはあなたの神、主の名をみだりに唱えてはならない。」ヤハウェと唱えてはならないのですか?イスラム教ではさかんに「アッラー、アクバル!」と唱えていますね。
先生:フェティシズム(物神崇拝)の神々は人間が神に指定して、願い事をし、聞き入れてくれないとその神を攻撃、破壊しました。だから神々は人間の奴隷だったのです。これを逆転して、本当に偉大な神はコスモスから超越しているJ( )であり、万物を造られたK( )ですから、人間の主人です。つまり人間が神の奴隷です。だから奴隷が主人の名を呼ぶのが失礼に当たるというわけです。イスラム教の「アッラー」は神の名というより、「神」という言葉だと考えてください。キリスト教では「主イエス・キリスト」の名は大いに呼んでもいいことになっています。
花子:「四、L( )を覚えて、これを聖とせよ」日曜日のことですね?
太郎:ユダヤ教では土曜日がL( )だった気がます。
先生:土曜日が正解です。神は六日間で天地創造を終えられたので、七日目に休まれたのを記念して、この日は人間たちも神に感謝して休みなさいということです。この日に仕事をすると初めのうちは死刑でした。食糧の調達もできませんし、病気の治療もできなかったのです。戦争で攻撃されて反撃できずにたくさん殺されて、防衛だけはしてもよいことになりました。
花子:「イエスはL( )によいことをするのはよいことだ。」といって治療をしましたね。
先生:イエスは、安息日は人間のためにあるといって、安息日のトーラーを軽視したので、弾劾の理由の一つになったのです。ともかくこの四つの規定が宗教的な特徴をあらわしていますから絶対に暗記です。四つとも違反すれば死刑です。
花子:ギョ―!「ヤハウェー」と言ったら、即死刑ですか?十字架にはりつけですか?
先生:十字架はローマ帝国の刑罰です。ユダヤでは投石器で石を投げつけて殺すのです。
太郎:この「G( )」を中心にM( )(律法)があって、神から定められた掟ですね、これを遵守すればN( )に栄光がもたらされ、遵守しなければ神の怒りのO( )が降るわけですね、ノアの大洪水やソドムとゴモラのように。
花子:あのヘブライとかユダヤとかN( )の使い分けが分かりません。
先生:M( )によって神とN( )は契約関係になっているわけです。ですからヤハウェはO( )あるいはP( )でもあります。
N( )というのは元々ヘブライ人とアラビア人の共通の先祖であるアブラハムの子ヤコブに神からつけられた名です。それは「神の兵士」という意味でした。しだいにヤハウェ信仰の共同体の名ということになりました。それに選ばれた民族がヘブライ人です。ユダヤというのは古代ヘブライ王国が分裂して南がユダ王国になったのでそこの人々をユダヤ人と呼ぶわけです。北の元イスラエル王国のサマリアでは信仰が変わってしまったので、互いに敵視し合っていたようです。ただ北でも後にイエスが活躍したガリラヤ地方には元々の信仰を守り、エルサレム神殿に参りに来る人々が多かったのです。
太郎:イスラエルは自分たちは神から選ばれた特別の民であるというQ( )が強烈ですね。それにいつか神がR( )を遣わせて、イスラエルを異民族の支配から解放するというR( )信仰があったのでしょう。
先生:実はユダ王国が新バビロニアに滅ぼされた時に、ユダヤ人が大勢、バビロンに連行され、BC586年〜BC538年囚人労働させられました。これをS( )と言います。
花子:預言者21( )はこの苦難を、M( )を守らなかったイスラエルに神が与えてくださった試練と受け止め、やがてR( )によって解放されると預言したのでしょう。そしてペルシア帝国が新バビロニアを滅ぼして、やっと解放されエルサレムに戻って神殿を再建すると共に『バイブル』を編纂して本格的に22( )が成立したのですね。
太郎:異民族による支配がその後も続いたので、先ほどのR( )信仰が起ったというわけですね。
先生:しかしR( )が本物かどうか判断が難しいのです。唯一神信仰ですから、神の子ではないので「23( )」と呼ばれます。ですから信用されるために奇跡を見せますとかえって怪しまれます。それでやはりM( )の遵守によってのみ救われるのだという信仰が盛んになります。これを推し進めたのが律法学者と呼ばれた説教師たちです。
問 上の( @ )〜( 23 )に下の語群から適当な語句を選んで記入しなさい。
イスラエル トーラー 命の木 メシア 過ぎ越し 十戒 万物の創造主 安息日
人の子 天地創造 契約の神 モーセ バイブル 裁きの神 唯一絶対 エリート思想 偶像崇拝 唯一神 バビロン捕囚 見えざる神 善悪を知る智恵の木 エレミア ユダヤ教
キリスト教1
救われる為にトーラー守りたるその心根に罪は宿りぬ
花子:先生、いよいよご専門のキリスト教ですね。
先生:いや、特にキリスト教が専門ではなかったのですが、最近、オーム真理教事件以降宗教に関心が強くなりまして、イエス復活の謎解きで二冊も本を出しています。その関連に触れると切りがありませんので、ホームページで読んでください。
太郎:ところで、イエス・キリストは実在の人物なのですか?
先生:イエス・キリストを日本語に訳しますと「救い主イエス」です。キリストは@( )のギリシア語で普通名詞ですから、人名ではありません。
イエス史料というのがほとんどキリスト教関係の資料なのです。ローマ帝国やユダヤ教の史料には出てきません。十字架で磔になったという史料もないのです。それで19世紀からそういう疑問が囁かれているのです。ですから100%確実とは言えませんが、架空の人物に対する信仰をでっち上げて、そのために使徒をはじめ多くの信徒が殉教するというのは不自然です。ですからイエスが架空の人物であるという決定的な証拠がない限り、実在したと考えるべきでしょう。
太郎:しかし、イエスが実在したとしたら、イエスの行った奇跡特に復活などもあったことになりませんか、だってそのことでたくさんの信徒が生まれ、殉教もおこなわれたのですから。
花子:それは鋭い指摘ですね。キリスト教徒なら奇跡はそのまま信じればよいのですが、キリスト教徒でない人は信じられませんからね。イエス教団の活動の実態や復活信仰の生じた理由などを説明できなければなりません。
先生:全く正当な疑問です。それについて私は著書できちんと謎解きをしていますので、そちらを読んでください。「倫理」に入りましょう。
太郎:まだ実在かどうかに関連があるのですが、イエスが生まれたのは『A( )』ではベツレヘムとなっていますが、それも怪しいのでしょう。それに聖母マリアのB( )というのも眉唾ですし。
先生:それはイエスが@( )だということを説得するために造られたお話です。メシアはB( )の子孫でなければならないことになっていたので、B( )と同じ出生地ということにしたのです。イエスはC( )のナザレ出身で「ナザレ人イエス」と呼ばれていました。
花子:そう言えば、クリスマスもイエスの誕生日ではないそうですね。
先生:イエスが何時生まれたか分かっていません。なくなったのは紀元後30年が定説です。冬至の日が太陽の誕生日とされており、イエスも世の光として太陽に擬えられるので冬至をイエスの誕生を記念する日にしたのです。
太郎:イエスの前にD( )がいて、ヨルダン川でE( )を授けていたそうですね。
先生:彼はイエスの従兄妹だったことになっていますか、イエスに先駆けて「F( )」が近づいたのでG( )て、E( )を受けなさいと呼びかけていたのです。イエスも後に「時は満ちた、F( )は近づいた。G( )てH( )を信じなさい」と宣教しています。
花子:E( )を受けとおくと、神の裁きの時に罪を問われないのでしょう。どうして彼に罪を洗い流す権威があったのですか。彼は@( )だったのですか。
先生:それは神から授かったというしかありませんね。彼はガリラヤの領主ヘロデに殺されてしまいますので、@( )ではなかった、前座だったということですね。イエスはヨルダン川にいて民衆を待つのではなく、ガリラヤ湖の村々を廻ってH( )の宣教をしたのです。
太郎:そのH( )というのがよく分かりませんが。
先生:劇画で『新世紀エヴァンゲリオン』という題名のがありますが、あの「エヴァンゲリオン」です。「幸せのたより」という意味ですから、もうすぐF( )つまり神の直接支配が実現するという知らせです。意味が転じて「イエスの言行」の意味につかわれています。「I( )」にはマタイ・マルコ・ルカ・ヨハネの四つあります。これらの証言が一致しているので、記録として信用できると言うわけです。
花子:F( )は心の中にあるというのはどういう意味ですか。
先生:それはイエスが何故自分のことをメシアだと思ったのかと関連します。民衆はユダヤの王が現れて、ローマ帝国の支配から救い出してくれると思っていました。でもイエスは武力で解放してもいずれ武力で滅ぼされるだけだと思いました。それは真の解放ではないのです。真の解放は心の中にJ( )(神の愛)を受け容れ、心の中にF( )をつくることなのです。このJ( )はK( )になって全ての人々にそそがれるL( )愛であり、決して報いを求めないM( )な愛です。そして「右の頬を打たれたら、左の頬をだしなさい」と諭し、「N( )を愛し、O( )の為に祈れ」と教えたのです。
太郎:要するに精神的な解放を説いて、政治的な解放を諦めさせようとしたわけですね。
花子:そうじゃなくて、憎しみに対して愛を返すことで、真の平和をもたらそうとしたのでしょう。ローマ帝国の人々だって精神的に感化されてローマ帝国全体が神の国になれば、その時には政治的解放も実現されているということでしょう。
先生:全くその通りです。イエスにすれば、強大なローマ帝国に武力で抵抗するよりも、精神的に優位にたった方が解放の可能性はあるのです。実際、イエスの死後キリスト教はローマ帝国内で浸透して、ローマ帝国はキリスト教を国教としたわけです。いかなる殉教を伴う弾圧に遭っても決して武力で抵抗はしませんでした。
花子:「山上の垂訓」の中に「P( )。天国はあなたがたのものである。」という表現がありますね。この言葉で、イエスの教えが民衆の心に届いたと言われているそうです。
先生:当時、ユダヤ社会には三つの階級がありました。一つはサドカイ派これは聖職者で祭司階級です。次はQ( )これは律法学者ともいわれトーラーに詳しいので民衆にトーラーについて解説する説教をシナゴーグ(公会堂)でおこなっていました。彼らは富裕階級だったのです。大部分の人々はR( )(地の群れ)と呼ばれた貧しい民衆です。彼らは字が読めない人が多く、トーラーに詳しくありませんし、貧しいので知っているトーラーもなかなか遵守できません。彼らは罪を意識して、自分たちは救われないと絶望していました。この世で地獄のような苦しみを嘗めながら、次の世でもゲヘナ(地獄谷)は間違いなしです。イエスは神は人間を作ったのだから人間の父であり、その父がこの世で苦しんでいる人々も次の世でも苦しめるなんて、そんな無慈悲な筈がないと考えました。トーラーはあくまでも生きていくための指針を示されたもので、地獄に落とすためのものではない筈です。肝心なことは「二つの愛」です。つまりS( )ですね。この二つの愛さえ実行していればそれで、たとえ字句どおり守れないのがあっても、トーラーの精神はまっとうできている筈だとイエスは確信したのです。民衆は神に頼り、互いに助け合って生きるしかないので、この二つの愛に生きているのですから、神の国は確実に保証されているということなのです。それでこの貧しい人々は幸いだという「幸いの説教」が生まれたのです。
太郎:それは素晴らしい、感動的ですね。逆に言えば豊かな人々は今幸福ですが、たくさんの貧しい苦しんでいる人々がいても、自分は贅沢三昧して暮らしているわけですから、隣人愛を実行できていないわけで、次の世はゲヘナ行きが保証されているわけですね。この世と次の世はあべこべだというわけだ。これは民衆に受けたでしょうね、きっと。
先生:ですから「金持ちが神の国に入るよりも、駱駝が針の穴を通る方がずっとたやすい」のです。たとえトーラーを字句どおり守っていても、それを自分が救われるために守っていたのでは、救われないということです。
花子:神はトーラーを守ったら救ってあげると約束されたのじゃないのですか。それなのに救ってもらおうとトーラーを守るとかえってゲヘナだなんて、詐欺ですよ。
先生:だって自分が救われるために「人には親切しなさい」とか「隣人を愛しなさい」というトーラーを守って、人の世話をしても、結局は自分の為にしている利己的行為なので、それは愛を装っているだけで本当に愛しているわけではないのです。それは神を偽ろうとする最大の神への冒涜なのです。Q( )の説教師たちは自分は裕福な暮らしをしながら、トーラーをボランティアで教えて民衆を救って愛に生きているつもりでいるのですが、それはあくまで自分が救われたいが為の偽善だから、いくらトーラーを厳密に守っているつもりでもイエスに言わせれば、ゲヘナ行きは確実なのです。
貧しい者は幸いである ファリサイ派 新約聖書 ガリラヤ バプテスマ 神の国 アムハーレツ
迫害する者 福音 メシア アガペー 悔い改め 隣人愛 自己犠牲的な ダビデ 汝の敵 福音書 パプテスマのヨハネ 神への愛と隣人への愛 分け隔てのない
キリスト教2イエスの受難と復活
聖霊を宿して悪霊払いたる技冴えわたりその名とどろく
人々の罪を背負いて贖罪のクロスにつけり、蘇りしか
花子:「幸せの説教」では、貧しい人々だけではなく、「悲しんでいる人々」「柔和な人々」「義に飢え渇く人々」「憐れみ深い人々」「心の清い人々」「平和を実現する人々」「義のために迫害されている人々」が「幸い」だとされ、彼らによって「神の国」が構成されるとされていますね。
先生:イエスは、神の愛と救いを求める民衆に応えようとして、@( )のパフォーマンスをし、民衆の心に届く説教をして、ガリラヤ湖畔のカファルナウムという村に共同生活の場をつくったようです。これを拠点に布教しようとします。
太郎:先生、@( )をしたというのは本当ですか?いわゆる民間のイエス伝承じゃないのですか?
先生:心の中に神の国を持ち愛に生きることで救われることが分かったのだから、それは神の霊が降って、悟ったことだと思ったので、イエスは自分の中にA( )が宿っていると信仰していました。それで、その聖霊の力で、悪霊を払えると思って、そういうパフォーマンスを行ったら、これが爆発的に受けたわけです。
花子:ということは本当に病気を治したり、死者を生き返らせたりしたのですか。
先生:さあ、どうでしょう。倫理の授業では扱いきれません。ただ民衆はそのB( )にふれて、驚き、教団が膨れ上がったようですね。民衆が信じ込むだけのすごいパフォーマンスだったことは確かでしょう。
太郎:それでファリサイ派などは警戒して迫害を始めたわけですね。
先生:イエス教団はメシアの力を信じ、メシアの言葉に従うことによって救われると言う立場です。つまり民衆はトーラーを遵守することで救われるのは無理ですから、メシアにバプテスマをしてもらい、悪霊を払ってもらって神の国の到来を待つしかないのです。とりあえずはイエス教団に入ることで救われるということですね。それではファリサイ派にとっては、トーラーを守ることで救われるという立場だから、イエスたちはトーラー秩序に基づくユダヤ社会を破壊する集団に見えたわけです。
花子:いくら弾圧されても、本当にA( )が宿っていれば負けないでしょう。
先生:それがイエスにとりついているのは聖霊ではなく、悪霊の親玉で、悪霊をやっつけるふりをして、実はトーラー秩序の破壊をねらっているという宣伝をされたのです。母マリアなど家族がその宣伝に惑わされ、イエスを引き取りにきて、イエスが怒っていることが書かれています。ともかくイエス教団は孤立してパフォーマンスができなくなり、追い詰められたので、最後の起死回生をねらってエルサレム神殿に乗り込んで、宗教権力を奪取しようとするわけです。
太郎:クーデター計画ですか。
花子:まさか、右の頬を叩かれたら、左の頬をだすぐらいだから、暴力はないでしょう。
先生:C( )の前には、メシアを名乗る人が平和的にロバに乗って神殿に入って説教をし、民衆に支持を訴えてもいいというイベントが慣例化していたらしいのです。でも支持されて神殿権力に迫れればいいのですが、支持されなければ、偽メシアとしてユダヤのD( )で裁判にかけられる恐れがあります。それでイエスはエルサレム神殿に乗り込むけれど、裁判にかけられて死刑になるだろうと三度も予告しているのです。
太郎:やぶれかぶれですね。でもやるっきゃなかったのですか。
先生:いや大丈夫、ちゃんとE( )することも予告していましたから。
花子:すると死刑やE( )をショーとして企画していたということですか。
先生:最悪のシナリオとしてはそこまで考えて、神殿に入り、パフォーマンスと説教で支持を得ようとしましたが、二日間で失敗しました。
太郎:奇跡も悪霊のしわざと思われ、民衆が期待していたメシアのイメージに合わなかったということですね。
先生:メシアはF( )の子孫でなければならないのに、イエスは血統の証明ができないので、メシアはダビデ王の子孫でないと言い出します。急にそんなこといわれても、偽メシアだと思われるだけですね。民衆はユダヤを率いてローマと戦う王を求めていたのに、「G( )のものは、G( )に返せ。神のものは神へ」といって権力への従順を説きます。それにイエスは神殿権力を権威を否定して、神殿権力に対抗しようとしたので反発をかうところもありました。神殿信仰が強かったので逆効果だったのです。結局最後には民衆がイエスを捕まえにきたのです。
太郎:その前に「H( )」ですね。金曜日が処刑だから木曜日の晩餐ですか。
先生:当時の暦は、夕方から始まるので、晩餐が金曜日の始まりなのです。イエスはパンをちぎってこれが私の肉である。これを食べなさい。赤ワインをついでこれが私の契約の血である、これを飲みなさいといって、「I( )」を行ったのです。実はこのパフォーマンスにこそ復活の謎を解く鍵があります。これがミサの始まりとされています。その後で裏切り者のユダに率いられて民衆がイエスを逮捕し、最高法院で死刑をローマ総督に要求する決議がなされたのです。
花子:どんな罪で死刑なのですか。イエスは何も罪は犯していないのでしょう。
太郎:安息日に治療をしたのは罪ですよね。
先生:ユダヤ教徒に言わせるとイエスの言動は当時の裁判では十字架刑はありえないから、バイブルの内容はユダヤ教徒にイエス番の罪を着せるための冤罪だということになっています。でもイエスはトーラーによる救いというユダヤ教の原理から、メシアによる救いの原理に転換しようとしていました。そして彼らの布教を拒否した町に呪いをかけています。彼らは奇跡のパフォーマンスを行っていただけに民衆にすれば大変恐ろしいと感じたかもしれません。それに偽メシアとなれば神への冒涜ですから罪も重かったかもしれません。
花子:ローマ帝国がイエス教団を脅威に感じることはあったのですか。
先生:むしろユダヤ教内部で分裂している方が、統治上では都合がよかったので、イエスの処刑をポンテオ・ピラト総督が嫌がったという「福音書」の記述は正しいと思われます。
太郎:三日後蘇ったというのは眉唾ですね。
先生:金曜日の午後三時に絶命して日曜日の朝には復活していますから四十時間もかかっていません。ですから三日後じゃなくて、三日目ですね。墓が空だったのです。そして弟子たちの前に現れたということになっています。それで弟子たちは復活を信仰して、死を恐れない布教をしていますから、私はイエスが復活したのを見たと弟子たちは本気で信仰していたと思います。ただ本当にイエスの肉体が復活したという見解はとりません。
問 上の( @ )〜( I )に下の語群から適当な語句を選んで記入しなさい。
ダビデ王 聖霊 最後の晩餐 奇跡 最高法院 悪霊払い 過越の祭 カエサル 復活 主の聖餐
キリスト教3 キリスト教の成立
死に克ちて蘇りにし人の子は天に昇りぬ、再臨は何時(いつ)
いとし子をクロスにつけて示す愛、それに応えぬ人に裁きか
愛なくば山を動かす信仰も無に等しきや、神は愛なり
太郎:イエスの復活なんてとても信じられませんが、ともかく弟子たちの前にイエスは現れた。でも天の昇っていってしまった、そして帰ってこない。これじゃあ何のために神が復活させたか分からないじゃないですか。
先生:確かに、地上に戻ってくる@( )が二千年以上もないというのは、おかしいから、A( )を疑うのはもっともです。とはいえ当時の弟子たちはイエスのA( )した姿を確かに見たと確信して、イエスが神にB( )と認められ、死に打ち勝ったメシアであると確信しました。それで自分たちも死を恐れずに布教しようとしたわけです。こうしてペトロやイエスの弟ヤコブを中心に原始キリスト教団がエルサレムにできました。
花子:しかしイエスというメシアがいてこそ、メシアによる救いというイエス教団の教えは、意味を持つわけで、@( )を待つだけの信仰になってしまいますね。
先生:でもイエスは復活したことは前提ですから、@( )は確実にある筈です。そしてその時には、イエスはきっと裁かれて地上に君臨されることになるでしょう。その時までに、イエスに帰依する人々を増やしておかないと、みんな裁かれてゲヘナ行きになってしまいます。
花子:アレー?イエスは愛を説かれ、人々を救うために戻ってこられるのでしょう。
先生:イエスは十字架につけられて殺されたのですよ。人々は、神の子を殺したのです。これは決定的な罪ですね。これ以上もないような。
太郎:ということは神は人々を救うために、自らのひとり子を犠牲にされたということでしょう。それほどまでに神は人類を愛されて救おうとされたわけで、究極のC( )ですよね。
花子:イエスを犠牲にして、人類の罪を贖ったので、この十字架を「D( )の十字架」と呼ぶのでしょう。いわゆるD( )信仰ですね。ですからイエスの死によって既に人類は救われたのではないのですか。
先生:神が自らのひとり子まで犠牲にして人類の罪を示されたわけでしょう。ヤハウェはE( )ですから。自分の息子を犠牲にされる悲しみはどんなにか激しいものであったでしょう。イエスが神の子であったことは、A( )したことによって証明されたはずです。しかし多くのユダヤ人はそのことを認めませんでした。
太郎:それで神はかたくななユダヤ人たちを見捨てて、イエスの復活を信仰し、イエスをメシアと信仰した人だけをB( )として認めることになったのですね。
先生:その教義をF( )と言います。ですからイエスの@( )までに信仰しないと、ゲヘナ行きということですね。しかしあくまで倫理の授業ですから、アガペーに目覚め、隣人愛に生きることによって、イエスの精神を引き継ぐことになり、充実した幸福な人生をおくれるようになるというように解釈してください。ゲヘナもあくまでも魂の問題です。
太郎:ユダヤ人中心の布教から異邦人中心の布教になっていきますね。それで活躍するのがG( )です。彼はファリサイ派の説教師で、初期キリスト教団を弾圧していた張本人なのに、どうしてキリスト教にH( )したのですか。
先生:それはキリスト教徒たちが「汝の敵を愛し、迫害する者の為に祈れ」というイエスの教えを忠実に実行したからでしょう。憎しみに対して愛を返され、自分が殺される際にも殺す者の為に祈るという態度に圧倒され、そこまで導くことができたイエスに対して心が動かざるを得なかったのではないでしょうか。彼は突然光に眼がくらみ、道に倒れていると「サウロ(以前の名)よ、サウロよどうして私を苦しめるのか」というイエスの声を聞いて、それでH( )したと報告しています。
花子:パウロはイエスに会った事がないのにどうしてイエスの声だと思ったのですか?
先生:それは鋭いつっこみですね。ひょっとしたら、サウロの心の動揺を読んだキリスト教団の人々が、回心させるために一芝居打ったのかもしれません。ともかくG( )は使徒に加えられ、異邦人への布教に活躍します。そして改宗のためには、I( )をしなくてもよいことにするなど民族宗教からJ( )への脱皮を図ったのです。
太郎:彼は罪を根源的に捉え、アダムとエバ以来、人類が背負ってきたK( )と捉えました。それで神の子イエスでなければD( )はできなかったとしたのです。
花子:それからパウロで忘れてはならないのはキリスト教三元徳ですね。
先生「L( ・ ・ )この三つはいつまでも残る。その中で最もおおいなるものはM( )である」とパウロは語っています。「たとえ山を動かすほどの完全な信仰を持っていようとも、M( )がなければ無に等しい」のです。
問 上の( @ )〜( M )に下の語群から適当な語句を選んで記入しなさい。
義 信仰・希望・愛 愛 世界宗教 割礼 原罪 アガペー 贖罪 人格神 信仰義認説 パウロ 回心 再臨 復活
キリスト教4 キリスト教の発展
ペルソナは異にすれども父と子と聖霊なる神一つなるらし
太郎:いわゆる「福音書」を中心にする『@( )』が出来上がったのは何時頃ですか。どうしてそれは古代ヘブライ語でなく、ギリシア語で書かれていたのですか。
先生:あまりマニアックになると敬遠されますので、控えますが、当時古代ヘブライ語はパレスチナでは死語になっていまして、主にアラム語が日常会話だったということです。それからギリシア語も通じていたようですね。特にキリスト教団はギリシアで発展しましたので、一世紀末に出来上がった頃にはギリシア語になってしまったのです。ですからキリストもメシアのギリシア語なのです。イエスもギリシア式の発音です。
花子:一番弟子のA( )はローマへ行って、そこにB( )を立ち上げ、これが「教会の中の教会」と呼ばれ、その最高指導者が後にC( )と呼ばれるようになるのでしょう。
太郎:皇帝ネロがローマの街に放火して、それをキリスト教徒のせいにし、厳しく弾圧したりしましたね。A( )もパウロも殉教しました。先生:禁教されていた時には、地下墓地であるD( )で集会を持って信仰を守り続けていたようです。やがて普遍性のある愛の教えで、奴隷階級などの下層階級だけでなく、広くローマ帝国内に浸透して、313年にはコンスタンティヌス帝の勅令で公認され、392年にはテオドシウス帝がキリスト教をローマ帝国の国教に定めました。
花子:そうなると今度はキリスト教以外は認められなくなりますね。
太郎:江戸時代の日本でもキリスト教は禁教になりましたが、もし布教を許してキリスト教が勢力が強くなると、今度は従来の神仏への信仰が禁じられてしまう恐れがあったのでしょう。
先生:そこが一神教の独善的なところです。ともかくローマ帝国内で大きな力をもつようになりますと、教義を整える必要から325年にE( )が開かれ、父と子と聖霊はF( )だというアタナシウス派の説が採択されました。
花子:父なる神ヤハウェと子なる神イエスとG( )なる神は、H( )は異なるがI( )なので唯一神であるという説でしょう。H( )が違うということが異質性を意味すると思いますが、どうも苦しい説明ですね。
先生:聖母マリアに神の聖霊が処女懐胎で宿り、それが育って別のH( )を持ったイエスが誕生したけれど、聖霊においては神と同質だというように解釈しているのでしょう。確かに人間の理性では、理解しがたいことてあると認めた上でのことです。この時代は教義を作り上げるために教会の指導者であるJ( )が活躍しました。その代表的な人物はだれですか。
太郎:はい、K( )です。パウロからキリスト教三元徳を引き継ぎ、ギリシア四元徳の上に置きました。「原罪」についても、人間は原罪に落ちてから、自分の意志でL( )を行うことができなくなったとします。神からの一方的なM( )によって信仰も与えられるのです。
先生:彼はマニ教とキリスト教の間を揺れ動き、パウロの手紙を読んで信念を固めた遍歴を書いた『N( )』を書きました。そして新プラトン派の影響を受けて、『O( )』を著しました。神を愛し自己を卑下する「O( )」と自己を愛し、神を蔑視する「地の国」の二元論を展開しました。地の国は、地上における「O( )」である教会の権威によってその支配を正当化されなければならないと考えたのです。
花子:13世紀にはキリスト教会の修道院の学校でP( )が盛んになりましたね。
先生:その大きなテーマは「理性に対する信仰の優位」です。「哲学は神学のQ( )である」とされました。この世のこと自然のことは理性の領域ですから、理性に基づいて解釈すればよいのですが、P( )の大成者R( )によりますと、「M( )は自然を完成する」のです。この場合、M( )は神から与えられる恵みという意味で、信仰を指しています。「自然」は生まれつき備わっている肉体や理性のことなのです。ですから、この世の俗事については理性で間に合うけれど、聖なるものや来世のことは信仰によって理解しなければならないという意味です。この言葉がセンター試験に出題されたことがありまして、面食らったことがあります。
また彼は「神―天使―人間―動物―植物―無生物」を位階的に捉え、社会の位階である「法皇―聖職者―皇帝―国王―領主―農民」と対応させました。これによって身分制度を自然の秩序同様不変とすると共に法皇の権威を皇帝の上に置いたのです。
問 上の( @ )〜( S )に下の語群から適当な語句を選んで記入しなさい。
アウグスティヌス カタコンベ 聖霊 ペルソナ 善 侍女 トマス・アクィナス 同質 告白 三位一体 スコラ哲学 ペトロ 神の国 新約聖書 恩寵 ローマ教会 法皇 ニケア公会議 教父
イスラム1
イスラムの教えは厳しひたすらに神を信じて吾が子捌くや
花子:イスラム教で「@( )」いうのは神の名前ですか、それとも名前でなく、「神」という意味ですか。
先生:最近教科書でも「イスラム教」とは呼ばず、「イスラーム」と呼んでいます。単なる宗教ではなく国家社会の体制なのです。神の名ですが、どうもややこしいのです。「@( )(Alláh)は、アラビア語のアル=イラーフ(Al-ilah)の短縮形で
"the god" 「唯一の神」を意味します。
「アッラー」という名の神がいるのではありません。」というのが表向きの答えと思われます。イスラム教徒もモーセの「十戒」は尊重していますが、そこに「主の御名をみだりに唱えてはならない」とありますから、「アッラー」が神の名ならイスラム教徒は「アッラー、アクバル!」を連呼しますから明らかに背いているわけです。それが「その神」というような意味だと名を読んでいないので神を冒涜したことにはなりません。
でもアラビア人が多神教だった時代から神々の中の最高神みたいな「アッラー」という名の神がいたらしいので、元々は神の名だったのが、普通名詞だったことにしているのではないでしょうか。
太郎:教祖A( )は、ユダヤ教やキリスト教を「B( )」と呼んで尊重しているわりには『バイブル』をきちんと読んでないのですね。
先生:おそらくムハンマドはユダヤ教徒やキリスト教徒の商人などと交際があって、『バイブル』の話を聞いていたのでしょう。読むとなると死語になっていた古代ヘブライ語を勉強しなくてはならないので大変です。それにムハンマドは神が認めた最後の預言者なのですから、その内容を記した『C( )』に必要なトーラーはすべて書いてあるということです。
花子:どうしてムハンマドは、唯一神アッラー信仰を打ち出すときに、ユダヤ教の神ヤハウェを偽の神だとせずに、それを引き継ごうとしたのですか。
先生:それはそれ以前に唯一神がいなかったことになるからでしょうね。それに『バイブル』にはアラビア人とヘブライ人の共通の祖先D( )が登場します。そこにハガルという正妻サラの奴隷女から生まれたE( )の話がでてきます。正妻サラは高齢になっても子供が出来なかったので、自分の奴隷女を差し出してE( )という子供をつくらせたのですが、90歳になってから、自分にF( )という子供ができますと、E( )を追い出したのです。
花子:それは酷い話ですね。
先生:ところが神は、ひとり子になったF( )を生贄に神に捧げるようにアブラハムに要求したのです。
太郎:子供を殺して神に捧げるのですが、残酷だなあ。もちろんアブラハムはことわったでしょう。
先生:肉を捌いて黒焦げになるまで焼くのです。でも神の命令は絶対です。アブラハムはそれはイサクにとっても大変名誉なことに違いないと考えて、イサクに言い聞かせて、納得させます。そしてまさに殺そうとした時に天使が現れまして、「ドッキリカメラでした(このギャグ古過ぎ)」ということで、神がアブラハムの信仰をテストしたということですね。こういう恐ろしいテストは真っ平ということでキリスト教会では礼拝の時に「我等を試みに合わせず、悪より救い出したまえ」と祈っています。
そして「見事合格です。ご褒美に全地の支配権をあげると神の仰せです。ただし、子孫にね」というようなことを天使が言ったのです。このようなどんなに極限的な恐ろしい命令であっても、神の命令ならば躊躇なく従うというのが、G( )なのです。それがH( )つまり絶対帰依なのです、この話にムハンマドは感激しまして。それでイスラム教なのです。
太郎:ユダヤ教徒たちはトーラーを蹂躙してきたので、神に見放された、キリスト教徒たちは預言者イエスを神の子にしてしまい、I( )に背いたので、キリスト教徒も神を裏切ったのです。だから神は今度はイサクの子孫にではなく、J( )に預言を授けたということですね。
先生:ヒーラー山の洞窟で修行をしている時に天使が現れて神の言葉を授けたようです。おそらく夢とも現とも分からない状態で天使との遭遇を体験したのでしょう。
花子:イスラム暦というのは、天使との遭遇から始まるのですか。
太郎:ムハンマドは西暦570年生まれです。裕福な未亡人と結婚していたのですが、40歳のころメッカ郊外のK( )で啓示を受けます。614年から生まれたメッカで布教しますが、622年迫害を受けてメディナに移ったのです。これをL( )(聖遷)と呼び、この年がイスラム元年です。
先生:8年後には一万人の大軍でメッカを攻略し、M( )の偶像を破壊し、その勢いでアラビア半島を統一してしまったのです。
太郎:二年後632年には亡くなっています。その時に彼の魂はN( )の神殿跡に来て、そこから昇天したとされています。それでN( )はイスラム教の聖地でもあるのです。
花子:ムハンマドの後継者をO( )というのでしょう。
先生:ええ、最初はムハンマドの近親者がO( )をしていました。四代目のP( )は従兄弟で、娘婿だったのですが、ムアーウィアに暗殺されます。この四代目までを正統カリフと呼びます。ムアーウィアもカリフを称しまして、世襲しました。ウマイア朝です。
太郎:Q( )はアリーとその子孫のみを正統と認める少数派で、現代のイスラム教徒の一割を占めているそうです。代々のカリフを正統と認めるR( )と対立しています。イラクではフセインはR( )でしたが、Q( )の方が多数なのですね。
先生:隣国イランでは親米で西欧化を図ったパーレビー王朝がQ( )のホメイニ師が指導したイスラム革命で打倒されたのが1970年代末です。イラクのフセイン政権は国内への波及を恐れてイラク・イラン戦争をしかけ、米ソやアラブ諸国からの支援を受けて軍事大国化をはかったのです。
問 上の( @ )〜( S )に下の語群から適当な語句を選んで記入しなさい。
ヒラー山 ムハンマド クルアーン スンニ派 イシマエル イスラーム アッラー イシマエルの子孫 アブラハムの信仰
ヒジュラ アカバ神殿 イサク エルサレム カリフ アブラハム アリー 一神教 シーア派 啓典の民
イスラム2
はるかなるメッカを目指す巡礼の旅の空舞う禿鷹の群れ
太郎:イスラムはまだ宗教が体制だし、『クルアーン』の内容がイスラム法すなわち@( )なのでしょう。まさしく宗教が生きているという感じですね。ところでイスラムの信者をA( )と呼びます。そして彼等が実行すべきこととして
B( )がありますが、その中身を具体的に説明して下さい。
先生:まず六信ですが、C( ・ ・ ・ ・ ・ )の六つを信仰せよということです。
花子:どうしてD( )が入るのですか。
先生:神はコスモスから超越した見えざる神ですから、人間の感覚に現れる事が出来ません。そこでD( )ガブリエルがムハンマドに神の啓示を伝えたのです。つまり神と人をつなぐものとして天使が重要だということですね。
太郎:D( )の反対に悪魔はどうなのですか。
先生:堕落した天使つまり堕天使というのがいます。これが悪魔にあたるのでしょう。神はアダムを自分に似せて作ったものだから、天使たちにアダムを見せて、アダムに跪拝するように要求しました。神の命令なので天使たちはしかたなく跪拝しました。でもイブリースだけはプライドが高くてなかなか跪かなかったのです。土から作ったアダムよりも、火から作られた天使の方が尊い筈だと思い込んでいたのです。そこで神は、獣たちに名付けるように天使たちに命じたのです、でも天使たちは教わっていないからといって、名付けることができませんでした。そこで神はアダムに、獣たちに名前をつけるように命じたのです。彼は動物たちの特徴を捉えてそれを名前にして呼んだのです。この最初の言語をアダム語と言います。お陰でイブリースは神に滅ぼされかかりますが、イブリースは終末の日までに人間どもを悪に誘惑して、ゲヘナを罪人でいっぱいにするから猶予してください、と神にお願いするのです。そうすると神は、イブリースに誘惑されるような人間はゲヘナで当然だとイブリースにしっかりやれと励ますのです。
花子:じゃあ神と堕天使はぐるだってことになりますね。
先生:神は愛の神、救いの神だけではなく、E( )という性格も持っていますから、神に背いたり、世を惑わしたりしますと神の裁きで滅ぼされるということになっていませんと、かえって神を頼ることができなくなります。悪に誘う堕天使と悪を裁く神は、人間の目から見ると協力しあっているように見えることもあるかもしれませんね。
太郎:経典には『バイブル』や『クルアーン』がありますが、ムスリムは『クルアーン』だけでいいということですね。
先生:ムハンマドは「最後の預言者」ですから、最後の預言である『クルアーン』だけが有効なのです。それにムスリムはギリシア語やヘブライ語は読めません。『クルアーン』はF( )だけが聖典です。ムスリムは『クルアーン』の暗記でF( )ができますので、イスラム圏が拡大しますと、通商圏が拡大します。イスラムの果した東西文明の交流の役割は大きかったと思われます。
花子:預言者はムハンマドが最後ですが、それ以前の預言者は『バイブル』と同じですか。
先生:そのうち6大預言者がG( 、 、 、 、 、 )
太郎:H( )というのはどういう意味ですか。
先生:H( )についての教義はイスラムが最も明確です。『バイブル』は、イスラエルの歴史としてはスケールが大きく、文学的にも素晴らしいですが、その点で明確ではないのです。キリスト教では死ぬと神に召されるとかいって天国に行くように言いますが、『バイブル』には『旧約聖書』『新約聖書』を通してエリヤとイエス以外は昇天していません。イエスは「人の子の肉を食べ血を飲んだものを、終りの日に復活させる」と言っています。それでキリスト教会ではミサと呼ばれるパンとワインの「I( )」が行われているのです。
イスラムではこの世の終りの日つまりJ( )が来ます。するとその日までに死んだ人は全員復活するのです。そして神のK( )を受け、B( )を守った人は楽園に入り、守らなかった人は地獄の煮えたぎる血の川に投げ込まれるのです。どちらも未来永劫続くとされています。
花子:楽園とはどんなところなのですか。
先生:禁酒なので御酒はでません。エデンの園のように果物がふんだんにあるのです。そして若くて美しい女性が三人もサービスしてくれるというようなことも書いています
花子:それは酷いですね。女性には若くて逞しい男性が三人でサービスするのですか。
先生:それは書いてないですね。そこはやはり前近代的です。イエスは来世には性がなくなると考えていたようです。そうでないと死がなくなるので人口が増えては困りますから。
太郎:B( )が守れなくてもL( )で死ぬとどんなに罪を犯していても楽園が保証されるのでしょう。これが自爆テロの原因なのでしょう。
先生:たしかにイスラムのために戦って死ぬと、楽園行きの指定席がもらえるという教義があるので、自爆テロが起きると言えます。
花子:M( )とはどういう意味ですか。
先生:だれが楽園に入り、だれがゲヘナに落ちるのかは、元々決まっていたとするのがM( )です。キリスト教ではルターやカルビンの予定説に当たります。
太郎:では五行に入りましょう。先ず信仰を口に出して表明することですね。N( )(シャハーダ)です。
先生:「ラ・イラーハ・イッラ・アッラー、ムハンマド・ラスール・アッラー」と唱えます。つまり「O( )」という意味です。これはいったん声に出しますと撤回できません。後から信仰を裏切りますと死刑ですね。
花子:じゃあ先生はイスラム法つまり@( )では死刑ですね。
先生:ムスリムには内緒ですよ。
太郎:つぎはP( )サラートです。メッカに向かって毎日五回礼拝します。
先生:当初はエルサレムの方向に向かって礼拝していたようですが、メッカのカーバ神殿に向かってするようになります。立って礼をし、座って礼をし,跪いて礼をしますこれを繰り返すのです。
太郎:Q( )サウムというのはイスラム暦九月つまりラマダーンに日の出から日没まで一切口にしないという修行ですね。
先生:本来なら唾を飲み込むのもいけないそうです。沐浴や薫香や娯楽も禁止です。
太郎:R( )ザカートという救貧税がありますね。
先生:これは重要ですね。人間は神の加護で生活できているわけです。自分の力で富裕な生活ができていると思ってはいけません。神に感謝し、稼いだお金は貧しい人を救うために差し出すことが大切です。自分が困窮したときは助けてもらわなければなりませんからね。これはイスラムが宗教共同体ウンマであるということなのです。
太郎:それからS( )ハッジです。メッカに一生に一度はおまいりするということですね。
先生:たとえメッカから地の果てほど離れていても、メッカを目指していくのです。フィリピンや中国のムスリムは大変ですね。昔ならたどり着けたかどうか、命がけです。メッカがメッカらない。
花子:でも命がけで旅をしてこそ神への思いも純化されるのでしょうね。
太郎:東西の交易の発展に果した役割はすごいでしょうね。参勤交代どころじゃない。
花子:イスラムの為に戦って死んだら楽園行きの指定席というジハドは、五行にはいらないのですか。
先生:それは公式には認められていませんが、戦争になると言われるのですね。
問 上の( @ )〜( S )に下の語群から適当な語句を選んで記入しなさい。
信仰告白 ムスリム 喜捨 神・天使・経典・預言者・来世・天命 終末 主の聖餐 礼拝 アラビア語 六信五行 天使 裁きの神 シャリーア 審判 ジハド 天命 断食 アダム・ノア・アブラハム・モーセ・イエス 巡礼 アッラーの他に神なし。ムハンマドはアッラーの使徒である。 来世