鳩が降りてきた

若山>私もカトリック教会のマリア信仰については疑問に思っています。初期キリスト教団はイエスを神格化するために、いろいろ福音書を改ざんしたり、ありもしないことを書き加えています。ですからイエスの原像を明らかにするためには、福音書の中の嘘の部分を徹底的に抉り取る必要があるのです。
やすい>とはいえ宗教書ですから、書かれてあることがどこまで事実かどうかを確定することは難しいですね。神が控えていることになってますから、どんな奇跡が起こっても、奇跡だという理由だけで嘘とは言い切れません。ただし,本書は精神分析によって、福音書に書かれてあることの内実を明るみにするという立場ですから、引き起こされた奇跡については、合理的に現実に起こり得た事実として解釈しなおしています。
若山>例えば,バプティスマ(洗礼者)のヨハネから洗礼を受けた時に、天から鳩が降りてきて、イエスに入ったとされています。やすい先生は、ヨハネが鳩を使ってあたかも聖霊が入ったかのように思わせたと指摘しています。ヨハネをマジシャンのように言われるのは,冒涜されたような気がします。
やすい>宗教的技術の中にマジック技術も含まれていたのです。それが後に独立して芸能化して、マジックと呼ばれるようになったわけです。その教団内部では種のない奇跡だと思い込まされていますが、外部から見れば種のある技術なのです。ですから他の教団の行う奇跡は、みんなマジックだといいながら、自分の教団の行う奇跡は正真正銘の奇跡であると主張するのです。それにヨハネは聖霊が入るという現象を認めた上で、それを目に見える形で表現しているのですら、トリックではあっても決して詐欺ではないのです。

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