やすいゆたか短歌集 五〇一〜六〇〇

ヘーゲル弁証法のイロハ

五〇一  花なれどつぼみのままで咲かぬなら、花を花とは呼ばれぬものを

五〇二  人の世の矛盾見据えて、発展の道筋つかみ熱と光を

家族・市民社会・国家

五〇三  愛(いと)しさに自然の契りに結ばれて作りし家族、愛の人倫

五〇四  糧得むと業の一つを分かち持つ、市民社会は欲の体系

五〇五  争える市民社会を調整し、理性で築く人倫の国


イギリス功利主義(18世紀〜19世紀)

五〇六 労惜しみ時を惜しんで最大の利を求むるが功利主義かな

アダム・スミス(1723〜1790)

五〇七 嘆けるは億千万の民の死か身内の不幸そはしかざるや 


ベンサム(1748〜1832)

五〇八  快求め苦を遠ざける本性は人を支配す二人の主権者

五〇九 人は皆平等なれや求むるは最大多数最大幸福


J.S.
ミル(1806〜1873)

五一〇 幸福は我が身にあるも他人事も厳正中立ナザレのイエスか


実証主義と進化論 1コントの実証主義

五一一  神祭り、理念掲げたその後の、実証の時栄えの世かな

進化論と有機体説

五一二  環境に伴いその身も変わらねば滅びる定めが進化を生めリ

五一三  もろともに社会も国も進化する十九世紀はダーウィンの世紀


科学的社会主義

五一四  マルクスの三つの源泉たずぬればヘーゲル・スミスにフレンチレッズ

マルクス

五一五  資本家も己が疎外の姿なり、すべては主体のあり方に帰す

五一六  文明を作りし罰かプロメテウス岩に縛られ内蔵抉らる

五一七  嵐をも巻き起こしたり温暖化わが身に返る疎外ならずや

『フォイエルバッハ・テーゼ』

五一八  対象(もの)すらも実践として主体なり、西田ビックリこれぞマルクス

五一八  内在の理念にあらず本質は社会つくれる関わりの和ぞ

五一九  反省は猿もできるぞ「哲学者」、解釈のみで変革忘るな

唯物史観の成立

五二〇  存在に生みだされたる意識なり、意識が存在生むのではなく

五一二  経済の根っこが有りてその上に政治文化の花が咲けるや

史的唯物論の定式

五一三  生産の力が伸びて桎梏になりし関係滅び去るのみ

剰余価値理論

五一四  働かぬ人の分まで働いて、搾り取られて身も痩せるかな

五一五  一日の生活費だけ働いて、はいさよならではおとといおいで

物化・物象化(物件化)・物神崇拝

五一六  商いの品物の同士が人として関わり合うのは神秘ならずや

五一七  労働が生みし価値が自立して資本となりて我を苛む

五一八  人と物その区別にぞこだわりて価値はつかめぬマルクスの穴


実存主義

五一九  何々と規定されたるその前に吾自由なり己を選ぶ


ゼーレン・キルケゴール

キルケゴールの大地震

五二〇  神呪い不義犯したる父なれば、吾呪われし罪の子なるを

五二一  張り裂けし思いも知らで咎むるや乙女心を弄びしと

主体的真理

五二二  そのために死ぬことをすら吾願ふ主体の真理吾は知りたし

実存の三段階

五二三  若さゆえ美と快楽に酔いしれどやがてむなしき朝迎へむ

五二四  身に負いし荷の重さゆえ甲斐ありき己の非力知りてはかなし

五二五 人は皆神より離れ罪にありその絶望にあがき苦しめ


ニーチェ

アポロンとディオニソス

五二六  民衆の生のエナジー昇華して現れいずる造形の美

超人への橋梁(綱)

五二七  憧憬の矢を放たなむ彼の岸へ没落ねがひ過渡(かと)を超へなむ

神は死んだ!人間が神を殺したのだ。

五二八  しがらみは隣人愛の十字架か釘打たれては挑み得ざりき

能動的ニヒリズム 

五二九  罪に堕ち神を無して生きしなら、己の旗を掲げて進めや

永劫回帰 

五三〇 神なきに為・価値・意味を持たざりきコスモスはただ永劫回帰か

精神の三態変化

五三一  荷を背負い力をつけしその上で、否定叫びて、創造に戯むる

 

2005年4月

ファンタジー 人間論の大冒険

第一話 鉄腕アトムは人間か?

五三二  親父ギャグ白けさせらる人なれど今懐かしきデンカ―の臭い

五三三  人間に生まれしことの不思議さよ生きることの哀しみを知る 

五三四  陽一はふと目覚めればアトムになり、ミニ核もちてサミットを撃て

五三五  ロボットに生きる権利を認むるやコスト次第でスクラップとは

五三六  人間も神が造りしロボなりや、進化できずに覇権失ふ

五三七  反抗の心を押さえしプログラム、たぎる怒りに固まりしまま
五三八  核ボール腹に収めて乗り込みぬ人とロボとのサバイバルかけ

五三九  神と人その関係を人とロボ移してみれば何が分かるか

五四〇  己知る心を持ちしそれ故にロボも人なり哀しみを知る

五四一  人間は身体だけに限るまじ、物やメカにも心宿れり


 
第二話 ギルガメシュの人間論

五四二  陽一は砂漠で目覚め彷徨り、キャラバン隊長ギルガメシュと呼ぶ

五四三  暴君を倒してウルクの王となりシュメール治め並ぶものなし

五四四  エンキドゥ、ギルガメシュと戦えど戦士の哀しみ通いて抱けり

五四五  森の神フンババ殺し拓きたり文明の世の人の栄えは

五四六  森の神殺しし罪を贖いてエンキドゥ逝く我に代わりて

五四七  死霊住む地の果てにあるマルシュ山エンキドゥ求め我は旅立つ

五四八  洪水で生き残りし人たずねては不死の薬を求め還らむ

五四九  十五年経ちて還らぬそのときは、新王立てて栄え引き継げ

五五〇  自らの限界超えて進み行く、そこに価値あり人として生く

五五一  ただ七日眠らすにいるそれだけで不死の妙薬手にせしものを

五五二  森焼きてこの手に入れし幸福も森なくしてはやがて費えぬ

五五三  日光の猿でもするや反省は、知恵寄せ合って自然再生


第三話 エデンの園の人間論

五五四  土の塵神の姿に作られき命の息得てアダム生まれぬ

五五五  中央の命と知恵の二つ木の実にふれまじき命惜しくば

五五六  慰めに作られし獣アダム見て名口ずさめりな心のままに

五五七  神に似し人は支配を任されぬ欲に駆られて命絶やすな

五五八  吾が骨のうちより出し女(ひと)ならば吾に帰れや吾が骨の骨

五五九  アンニュイのエデンの園の昼下がり行き場失いとぐろ巻く蛇

五六〇  善悪の知恵の木の実を口にして覆い隠せリ裸の恥じらい

五六一  食べないと遊んでやらぬと言われしか女がなどとふるはあさまし

五六二  何ゆえにサタンの化身に落とされし、石のライバル蛇にあらずや

五六三  労働は罪の報いか禁断の苦役は続けり塵となるまで

五六四  労働は自然に還る勤行か吹く秋風に胸を突き出す

 

2005年5月

第四話 オイディプスの闇

五六五  三叉路に気づきし時は投げ出され、己も知らず立ち尽くすかな

五六六  アポロンの神の御殿のその門に掲げし言葉「汝自身を知れ」

五六七 三叉路に迷いし我を襲いたる杖持つ人よ果つるも運命か

五六八  謎かけて人身御供を求めたる曲爪乙女愛を知らずや

五六九 テーバイを救いし故に王冠と共に得たるはかぐわしき女

五七〇  甘菓子の匂ひの姫はめくるめく禁断の床知る由もなし

五七一  先王の仇を捕らえて取り除けテーバイを救ふ道ほかになし

五七二  感覚で人を欺き隠れたる盲ゐてこそ見ゆまことの姿は

五七三  血を分けし子に殺さるる運命を避けむとライオスわが子殺めり

五七四  父殺し、母子相姦の予言避け離れし人は赤の他人ぞ

五七五  順逆の床に横たふイオカステ吾が妻にして母なる女よ

五七六  真実を見れぬ眼はくりぬきてひたすらに観よ「オイディプスの闇」


プロタゴラスの人間論

五七七 駄洒落にてはぐらかすのも弁論か、酔い回りなばさえも曇りぬ

五七八 数学や文字を教うるごとくして徳教得るや教え得ざるや

五七九 万物の真理をはかる尺度とは人それぞれの感じとるまま

五八〇 神々は土に水まぜこねまわし火にかけ作りぬ生き物たちを

五八一 後悔は先に立たずや人にまだサバイバルする特性与えで

五八一 知恵と火を盗みて人にもたらしぬプロメテウスは人を救えり

五八二 窃盗の罪を背負いて大岩に縛(いましめ)られて内臓抉らる

五八三 文明の内臓抉らる苦しみはヘラクレスならで解き放てまじ

五八四 神々にあこがれ抱く人なれば祭りて願ふ幸と平安

五八五 音節を区切りて作りし言の葉で人は築きし文明の世を

五八六 人は何故パンツ穿くやと問立てて栗本答えぬそれを脱ぐため

五八七 人間が作りし物も人間を語るが故に人に含むや

五八八 ポリスありはじめてながらふ人なればポリス語らず人は語れず

五八九 つつしみと戒めの徳与ふべし死に値ふべし弁えなくば

五九〇 ポリスをも人と捉える人間観、個々の市民はそを構成す

 

コーヒーブレイク―A 「人間論の穴」休憩室にて

五九一 どうせなら智子主役のバージョンでそれがだめなら拉致というかも

五九二 ファンタジー古典を材に作りしが男ばかりが前に出るかな

五九三 電脳の中で演じるキャラなれば役とは知らず命張りたり

五九四 リアルには指も触れない二人でもバーチャルならば飽きがくるほど

五九五 夢ならば天翔りたりリアルには自然のおきて抗ふまじきや

五九六 同じ夢繰り返し見て何時の日かかなふと思ふも若き日の夢

五九七 リアルとは異なる世界つくりたる夢見る力人を作るや

五九八 言の葉は登録したるメモリィを記号に代えて組み合わせしか

五九九 死んでまた別の世界に生まれしか一度きりなる人の生かな

六〇〇 バーチャルを抜け出て現に戻りたる入れ子になりてそこもバーチャル?

六〇一 ただ一度生きるが故に夢に生き夢に死なむといざ桶狭間

六〇二 試みに飲まず食わずにおりしなば、意識朦朧幻想もなし

六〇三 それぞれの話につながりまるでなしいかでつけるや本のまとまり

六〇四 ばらばらの人生生きる人でさえ己超えたる命引き継ぐ

六〇五 フィクションでたとへ百年生きたれどリアルに戻ればたかが百分

六〇六 読者をも穴に取り込み参加さすファンタジーを読む読者ありしや

六〇七 精神の自由奪われ演技する役者にありや自我の自由は

六〇八 有り得ない設定の中苦悶するその人物も幻想の人
 

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