気が付くと月曜の朝

                             船曵 秀隆

絶望に気が付かない生活を君は愛した

くだらないはしり書きを僕は愛した

日増しに変わる祈りからいかが御過ごしか

といつものあいさつを

人間てよっぽど祈り好きなんだね

傷の花に水をやる

赤子の産声が張り付く耳は冷たい

老人の涙を乞う

滅びるには静か過ぎる朝だ

貴方は死んだ時世界と一番仲良くなるのですよ

 

気が付くと 

月曜の朝だった

赤子の声が耳を刺す

今日もサーベルとせっけんを持って

貴方が産まれる前の死体を拾いに行かないといけない

 

溶岩の上を静かに歩く

この星の以前の様子が見える

死体の上で絆を交わした者

傷の上に血を流した者

あの日から人は美しいものを

見たがらなくなったんだよ

 

傷の花に水をやる

君を突き刺す確かな僕

それを讃える君

赤子の声が耳を濡らす

僕をせっけんにして洗ってくれというが

呪いのせっけんは紅く染まっていった

祈りのせっけんは滑りやすいからね

 

花はきっと明日の僕さえ知らないままなのだろう

泣きじゃくる赤子の耳に触れるものは枕

数日後 僕を旅立たせるだろう

短すぎる朝の風は老人の休日まで繋がってる

気が付かないように絶望の吐息で書き置きを

返事は休日まで待ってあげる

その日にはあの世に産声を 

次の日にはあの世に月曜日をと  

 

「気がつくと月曜の朝」は「初出:『関西詩人協会自選詩集
』2001.11.詩画工房」

船曳秀隆への感想

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