『間違いだらけのホリエモン嫌い』
        
     下里正樹&ホリエモン人間研究会著 あ・うん発行
                                       

                                     

 

〔目次〕

はじめに/怪物くん登場 7
 

第一部 ホリエモンのここが嫌い15
 
その1 /人生は「勝負」だノ16
その2 /人間を動かすのはお金だ@ 27
その
2 の続き/人間を動かすのはお金だA 34
その3 /オヤジ世代の権力構造に風穴を開ける46

第二部 ホリエモンを生んだ家庭教育
55
その1 /より広く、より高く56
その2 /しがらみを作らない63
その3 /大学は人脈作りの「場」69

第三部 夢とお金を手に入れるホリエモンの発想81
起業の原点はマンガ『 ナニワ金融道』 82
インターネットで何ができるの?
85
テレビの影響力をインターネットに引き入れる92
情報と時間の「さや」で稼ぐ発想99
面倒なことはしない105
プレゼン資料なんか要らない107
最高のスピードは「M & A 」だ!109
リスクへッジと交際費116
会社創業ではこれだけはやれ!これだけはやるな!121
税務・会計はプロに頼め!123
べンチャーキャピタルとのつき合い方
124
会社をつくるのは簡単! 126
「ダメもと」が起業の基本 128
まず営業!商売とはものを売って金を儲けること 131
あるセールスマンの着眼 134 

第四部   人を観る眼、時代を読む感覚 139
*人を観る
会社が大きくなったら社員教育が重要 140
 優秀な管理職にも限界がある 141
 部下を褒めるな!できることが当たり前 144
逸材には投資せよ 145
必要な人材だけが残る 150
「想定内」という言葉 152
自分を飾らずに「いい人脈」を持つ154

*時代を読む
ピラミッド構造の崩壊 160
多様性の社会よ来たれ 166
金持ちに重税を掛けるな!ただし相続税は100 % 171
 借金と貯金 177
 世界一をめざす逆算的人生観 180
成り上がり者を増やそう! 185
インターネットが可能にする「未来」 190


 おわりに/ホリエモンはどこへ行く? 196

                      はじめに/怪物くん登場!

 一人の「怪物くん」が、日本列島を震撼させています。ホリエモンという怪物が。かれの行くところ震度 8 の激震が走り、マスコミが色めき立ちます。

  地平線にちらりと姿を見せて「球団を買いたい」と言っただけで、もう大騒動。大新聞と鉄道会社とローン会社がしっかり手を結び「ここはお前のような無礼者が来るところではない!しっしっ、向こうへ行け!!」とヒステリックに叫びました。

  嫌われてしまったホリエモンは、つぎに「ラジオ局を買いたい」と言いました。とたんにテレビはラジオや新聞と手を組み「あの姿を見ろ、何と冷たい薄笑いであることよ。金まみれの怪物め」と、恐怖のキャンペーンを繰り広げています。

  これにつられて、金融業者も証券会社も、大出版社も電力会社も、おぞましげな目つきで、怪物くんの進路をさまたげようと、共同戦線を張っています。最近では、政治家も官僚も「もしやハゲタカの一族ではないか?」と、警戒の赤ランプを灯し、法律改正の防壁を構築しようとやっきになっています。

  堀江貴文32歳。福岡県八女市出身。東大中退。

  人呼んでホリエモン。二十三歳で小さな会社を作り、買収・合併をくり返していまや「ライブドア」のオーナー。六本木ヒルズ三十八階にオフィスを構え、東京を一望の下に収めながら「今に天下を取ってやる」と雄叫びを上げ、映画「いま、会いにゆきます」に涙を流し、五百億の資産とすこぶるの美人を持ち、手作りハムを作るのと競馬が好きな「怪物くん」。

 機会あるごとに「テレビと IT の融合は、双方向性、オンデマンド、ローコストの三点でメリットがある」と大声でくり返すものの、世間の大方は「あいつ、何を言ってるの?オオカミの寝言といっしょで、何回聞いても意味不明だ」

 言ってることが理解されないのに注目を浴びる。そこがまたすごい。威張らない人柄でありながら、あふれるバイタリティと放胆に世論は沸き、巷の民衆は寄るとさわると、

「わかんないけど痛快な男だ」

「わかんないけど、俺は大嫌いだ」

 と言い合い、ホリエモン談義は盛り上がる一方です。

 「俺は大嫌いだ」の声には、大いにうなずけるものもありますが、「ン?それはどうも・・ … 」と、首をひねりたくなるものもあります。

「他人の家に土足で上がり込んで、仲良くしましょうと言ってもうまく行かない」のホリエモン批判などは、その一例でしょう。

 土足厳禁の畳文化は日本だけのものです。世界の多くの国 々 では、靴やサンダルのまま家の中に入り、握手し、挨拶を交わすのがふつうで、玄関口で靴を脱ぐ風習はありません。

 日本でも国会議事堂をはじめ、ホテルや結婚式場など、絨毯文化の領域は増える一方、畳文化の領域は減る一方です。畳と絨毯と。足袋と靴と。どちらが上品か下品かは、にわかには断定できません。ここできっと反論があるでしょう。「そういう問題ではない、株買い占めのやり方を言っているのだ」それはそうでしょうが、兜町の証券取引所はいつから青畳になったのでしょう?フジテレビの人たちは会社の玄関で、いちいち靴を脱いでいるのでしょうか?

 「バカなことを言うな、あくまでものの例えで言っているのだ」

 なるほど失礼しました。しかし、例え方が間違っていませんか?

 批判者は率直にこう言えばいいのです。

 「あらかじめ相手に断ってから、株の買い占めに入るのが礼儀というものだ」

 「そもそも他人様が苦労して作った会社の株を買い占めるなどは、非常に失礼な行為だから、本来やってはいけない」と。

 言われたホリエモンは「へえ、いつからそのような礼儀なの?誰が決めたの」と問い返し、これをきっかけに、株売買における「礼儀」の虚構性が、はっきりしたでしょう。

  結論から言えば、株の売り買いに一定のルールはあっても、「礼儀」はありません。

 ましてや、土足だの靴下だのは関係ありません。ネクタイしていないと、株は買えないか?

 そんなことはありません。ホリエモンは最低のルールを守っていますし、裁判所もそのように判断しています。

 経営のトップが、手前勝手な「礼儀」や「慣習」によりかかり、たくさんのフジテレビ株を持たせたまま、ニッポン放送の株式を上場するなどという奇冷怪々を放置し、うすぼんやりしているから、買い占められるのです。

 ニッポン放送株の半数を買い占めたホリエモンと、買い占められたフジテレビ。比べれば明らかに後者が悪い。自分たちの無警戒、不手際を棚に上げて、ホリエモンを鬼か蛇のように忌み嫌うのは、筆者のような株にうとい者の目から見ても、いささか筋違いだと思われます。

 こんな声もあります。大新聞の投書欄に掲載された、京都市在住、十八歳高校生の声です。

    *「物おじしない堀江社長の姿」井上美甫

 「私は株のことについて全くの無知であるため、ライブドアとフジテレビによるニッポン放送株争奪戦は、正直言って何を争っているのかすらほとんど理解できなかった。しかしこの争いをテレビや新聞で見ていて感心したことがある。それはあのライブドアの堀江社長の物おじしない態度だ。

 あの巨大で伝統あるテレビ局を相手に、いつも冷静に淡々と振る舞っていたことにとても感動した。 『 テレビに出すぎや 』 『 生意気だ 』 とか周りのおじさんたちに言われても、決してテレビ出演を控えたり弱気な姿勢を見せたりしていない。それでいて、ちゃんと結果を出す。やはり「自分は決して間違ったことをしていない 』 という気持ちからだろう。いずれにしても本当にすごい人だと思う。

 堀江社長は、やりたいことがたくさんあるらしい。こんなに人々をワクワクさせてくれる人は今の日本でそういない。これからの堀江社長の活躍をとても楽しみにしている」(2005年3月22日「朝日新聞」奈良版 『 声』欄)

 この間、大新聞の読者欄には、ライブドア VS フジテレビについて、さまざまな意見が寄せられたと思われます。ホリエモン批判の声も多かったでしょう。

  しかし、あえて十八歳の若い声を掲載したのは、若者の中に起きているホリエモンへの期待、閉塞状況と戦う男への共感、時代変革の予兆を、投書欄の担当記者が感じ取ったからではないでしょうか?

若者の目は澄んでいます。

   半ば頬をゆがめながら自分の失態を棚に上げ、けんめいに余裕を見せようとするフンフレビ会長の老獪。

  「 … … じゃないですか」を連発、相手との距離感を絶えず確かめながら、けんめいに IT とテレビの融合メリットを説くホリエモン。二人のどちらが視聴者に対し誠実で愚直であるかを、若い世代はきちんと見抜いています。

 ―というわけで一事が万事、この間のホリエモン批判をつぶさに検証して行くと、日本社会に潜む歪みが、ホリエモンのユニークな発想法とともに、浮かび上がって来ました。

 ホリエモンのどこが変で、何がまっとうなのか?ホリエモンはどこに向かおうとしているのか?

 本書は

第一部で「ホリエモン嫌い」の根拠を探り、

二部でホリエモンを生んだ家庭教育、

そして第三部、第四部でホリエモンが夢とお金を手に入れるために考え出した[発想」「方法」「人を見る眼」一時代を読む感覚」をつぶさに見て行きます。

  「怪物くん」の言動に拍手喝采を送る人、眉をしかめる人。本書を手に取り、「待てよ … … 」と足を止め、しばし思いを巡らせて頂ければ、筆者の幸甚、幸甚。文中、堀江貴文氏の敬称に代え、いまはすっかり国民のなじみとなった「ホリエモン」の愛称を用い、登場人物の敬称は略しました。

 堀江氏の言動や発想については、読者の正確な理解を図るために、資料ナンバーを振り、巻末にまとめ、引用しました。

 

 2005年4月東京における桜開花の日に          
                                                                                                下里正樹&ホリエモン人間研究会記す

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