社会契約の思想


   
社会契約とは何か


個人あり生き残るためあいともに契約むすび社会つくりし


太郎:イギリス経験論の@(     )やA(    )は、B(      )でも有名ですね。ところでB(     )というのはどういう考え方なのですか。
 

花子:まずC(       )がいて、それぞれ自分の力で生きていこうとしますが、恐ろしい侵略者、凶暴な野獣などによって絶滅の危機に見舞われました。それで自然権の根本であるD(     )を守るためにみんなで社会を作ろうというE(  )をします。その際、F(   )に統治権を託すわけです。F(   )は、人民に代わって統治を行い、人民が平和的に生きていけるようにするわけです。

 

太郎:それじゃあ、社会契約というより、国家契約ですね。ところでそういう社会契約は、歴史的には本当に行われたのですか、全くのフィクションでしょう。
 

先生:ええ、社会と国家の区別はありません。B(     )を批判する人にはフィクションだといいますね。G(    )は『パトリアーカ(家父長制論)』で、王権は家父長権のようなもので、社会契約によらずに神から授かったものだから、不可侵だとしました。
 

花子:G(    )のH(     )に対して、王権は神授ではなくて、社会契約によるのだと社会契約説で批判したのではないのですか。絶対王政から市民革命という歴史の流れと、H(     )からB(     )へという思想の流れが照応しているのですから。
 

先生:絶対王政から議会政治、選挙権の拡大による民主主義の発展をふりかえりますと、絶対王政は古い思想で、民主主義と調和しやすい社会契約説の方が新しい思想だと誤解されがちです。でも17世紀に身をおけば、民主主義はギリシア・ローマの古典的な思想で、絶対王政の方がI(      )の登場による中央集権国家のシステムとして斬新です。
 

太郎:そういえばホッブズは社会契約説だけれど、絶対王政に肯定的だし、フィルマーの方がホッブズより後ですね。ところで社会契約にいたるまでの状態をJ(    )というのですが、これは論者によって違いますね。
 

( @ )から( J )にあてはまる適当な語句を次から選んで記述しなさい。

自然状態 フィルマー 社会契約説 近代主権国家 ホッブズ 契約 王権神授説 
主権者 独立した諸個人 ロック 自己保存権


 

        自然状態ははじめから戦争状態か?
 

ホッブズ
     人が皆野獣のごとく牙むかばリヴァイアサンをつくりて守らん
  ロック
  お互いに富と人格認め合い仲良く生きるが自然状態
  貧富の差生まれて互いに侵し合う修羅の世とぞなりぬるかな

  ルソー
  土地区切り、剣を持ちて争える、農耕・冶金が不幸の元かは

花子:ホッブズの『@(      )』によりますと、人間の身体は欲望を充足させることで動くA(    )です。つまりB(     )が一番人間の自然権の中で中心なのです。それで理性は欲望を充足させるための自己制御機能でしかありません。だから理性より欲望によって動くので、どうしても少ない富を奪い合うようになってしまいます。


太郎:それでホッブズは、自然状態ではどうしても「C(             )」になってしまうというわけですね。


花子:それに対してロックの『D(      )』では、人間の悟性は自己保存のためには争いよりも協調のほうがよいことを判断できるので、自然状態では、互いのE(     )を尊重し合っていたというのです。


太郎:それでは社会契約する必要はないじゃないですか。


先生:ええ、そうなんですが、ロックによりますと、貨幣が発生してF(     )ができますと、盗みや強奪がおこり、私有財産を争奪しあうことになります。それが大規模になりますと戦争にもなりますね。それで主権者に生命や財産を守ってもらうために、自然権の一部をG(  )して統治権を与えたということなのです。


花子:18世紀フランスのルソーは『H(        )』で自然状態を論じ、『I(     )』で社会契約説に基づく国家のあり方を論じています。それによりますと、原始状態では、人間はJ(  )して暮らしていました。だから言語もなく、財産もありませんでした。しかし困り果てた人を見ると、K(  )から助けずにはいられなかったのです。それで助け合うことから、一緒に助け合って暮らすようになり、言語が生まれ小さな集落も生まれたわけです。いわゆる未開状態ですね。この段階までは神も予定していたのですが、その後は人間が勝手にしたことで、その結果不幸な結果になったというのです。


太郎:それがL(     )によって土地を区切って奪い合うということですね。それにM (  )によって武器を作ったので戦争が起こります。それで社会契約が必要になったということでしょう。


( @ )から( M )にあてはまる適当な語句を次から選んで記述しなさい。
農耕や牧畜 社会契約論 万人に対する万人の戦争状態 貧富の格差 人格と財産 冶金 市民政府二論 リヴァイアサン 人間不平等起源論 欲望機械 孤立 信託 共感 
自己保存権

 

ホッブズの『リヴァイアサン』
 

 リヴァイアサンの絵

巨大なるジャイアントなり村守る、瞳凝らさば無数の人あり

各々が欲望機械の人なれば、集まりつくれる国家も機械か


花子:ホッブズの主著は『@(       )』ですね。この書名はA(        )の名前だそうですね。それとホッブズの社会契約説とはどう関係があるのですか。


太郎:A(        )のように強大な国家ということで、リヴァイアサンは国家の強大さを象徴しているわけですね。


先生:それが単なる象徴じゃないんです。本の表紙にでっかい巨人が剣をもって村を守っている絵が描かれているのです。ですからB(         )なのです。


花子:怪獣といっても恐竜みたいなのではなくて、人間なのですね。

先生:しかもよく見ますと、その巨人はおびただしい数の人間たちによって構成されているのです。


太郎:つまり国家は国民によって作られた組織体だということですね。それが主権者の意思に統合されて人格を持っているように見えるので、人間に譬えているのでしょう。
 

先生:私は譬えじゃなくて、国家をC(       )だと捉えていたと解釈しています。元々各個人の身体を欲望によって動く機械と捉えていたわけです。しかも神が造った自動機械だという認識です。それらが合体してより人工の大なる機械人間を作ったわけですね。ですからホッブズによれば、D(        )なのです。


太郎:もしそうだとしますと、国家以外の企業や学校やさまざまな団体などの組織体も人間だということになりますね。


先生:それで19世紀から法人という概念が生まれ、組織体も法的人格をもち、権利や責任を持つものとされています。もっともどこまで比喩として捉えられ、どこまで本気で人間として捉えられているかは微妙ですが。


花子:国家が生きた人間だとしますと、主権者は意志を決定する中枢であり、人民はその他の器官を構成する細胞みたいに位置づけられますから、主権者の意志に人民は絶対服従だということになりますね。


太郎:それに人民がE(   )を気に食わないから取り替えようとしても、国家が生きた人間なら、首を取り替えたら死んでしまいます。国家の死はF(    )の逆戻りで、人類の破滅を意味しますから、G(  )はいけないというホッブズの立場にうまくあっていますね。

先生:もともと社会契約説は、社会(=国家)は契約で作ったものだから、人民のH(       )を守れなくなれば、廃止したり、作り直してもいいのだという考え方だったのです。それをホッブズは、国家は生きた人間だとすることで、契約の破棄は国家の死になるので、自分の生命を脅かされる場合を除き絶対にしてはならないとし、絶対王政であってもG(  )はしてはならないとしたのです。主権者は人民と国家意志を決定するI(      )を交わしています。ですから主権者の決定は、人民に代わってなしたものだというのです。ですから手や足が頭の決定に逆らってはいけないように、主権者の決定したJ(       )
は人民自身だとして認め、決して逆らってはならないということなのです。


花子:J(        )が人民だというのなら、本人の利害に反する決定を主権者がしたばあい、人民はそれを本人の意志に反するとして取り消す権利はないのですか。


先生:国家も人間だというわけですから、個人の身体で頭脳が決定する意志は身体全体の意志だということです。身体の各部位はそれに文句をつけてはいけないということです。


( @ )から( J )にあてはまる適当な語句を次から選んで記述しなさい。
国家意志の本人 主権者 革命 人工機械人間 国家は生きた巨人 永久代理契約
地上最強の怪獣 戦争状態 自然権 国家も生きた人間の一種 リヴァイアサン

            ロックの道具としての国家

         
主権者に信じて託せり統治権、耐え難ければ革命に起つ

太郎:ロックは悟性が欲望をコントロールして、互いの人格と財産を尊重するという人間観を前提にしたうえで、貧富の格差から生じた@(         )として国家が必要になったというわけでしょう。ですから国家はあくまで道具であって、国家自体が生きた全体であったり、人間であったりということはないのでしょう。


先生:ええ、そうですね。社会の調整役として主権者があり、そのもとに官僚機構や軍事、治安組織があるわけです。人民は統治権を主権者にA(  )しているわけです。もし主権者が人民に耐え難い圧政を行えば、人民は元々、治安の維持と公共の福祉のために統治権を A(  )したわけですから、B(    )を解消し、主権者を取り替えるのは、当然の人民の権利だということです。

花子:ホッブズはC(        )の際に、フランスに亡命してイギリスの皇太子の家庭教師をしていた王党派です。それに対してロックはD(    )で活躍した議会派ですから、そういう立場の違いが理論にも反映しているわけですね。

先生:ただホッブズ自身は王党派だったことが多いけれど、古代ギリシア・ローマにあこがれて政体を変更してはいけない、首のすげ替えはE(    )だといっただけで、絶対王政でなければならないとはしていません。主権者が一人は王政で、少数が貴族政、多数が民主政ですね。各国にはF(     )があるからそれを変えてはいけないということです。

太郎:ロックは議会制民主主義の立場だったのでしょう。

先生:議会主権を強調しましたが、G(     )の導入には反対しましたから、民主主義者ではありません。ただし人民に革命権を認めているという意味では究極的なH(    )は認めているということですね。しかし実力行使の革命権を認めているのは、人民全体に投票権を認めていないからなのです。G(     )
ならば、政府のやり方が納得できなければ、選挙で政権を交代させられるので、実力行使による革命の必要はないのです。


( @ )から( H )にあてはまる適当な語句を次から選んで記述しなさい。
普通選挙 ピューリタン革命 社会契約 利害調整のための機関 国家の死 信託
人民主権 固有の政体 名誉革命

          ルソーの『社会契約論』

    諸人よ私的利害はさておきて、皆の幸こそ共に語らむ
         激論を交わして決めし一般意志(のり)ならば、守り抜くこそ真の自由か


花子:ではルソーはどのように社会契約を論じたのですか? 彼は@(       )で、王政など認めないのでしょう。

先生:ルソーの場合、大変大胆で独特の発想ですから、慎重にみきわめましょう。彼の説明は農耕と冶金によって土地争いから戦争になってしまって、それで社会契約で社会をつくることになるわけです。その場合、まず必要なのは、共倒れになる戦争をやめて、A(         )でどうすればみんなが仲良く平和に暮らせるようになるか話し合うべきだとしたのです。

太郎:みんなが集まるとかえって収拾がつかないから代表を選んだほうがいいのじゃないですか。

先生:ルソーに言わせれば、自分が加わっていない話し合いの結果に従うというのは奴隷と同じだということです。話し合いに加わってこそ、その結果に責任が持てるわけです。ですから「B(          )
」ということです。


花子:でも物理的に全員参加は無理でしょう。

 

先生:それが古代ローマには人民集会があって、町内ごとに全市民が参加して決議を行っていたそうです。それをルソーはヒントにしました。ともかくルソーには真の法律というものは、国民の総意によって作られたものでなければならないという確信があったのです。

 

太郎:しかしたくさん集まりますと、かえってみんな勝手なことばかり言ってまとまらないじゃないですか。


先生:実際はそうですね。でもルソーの考えでは、それはそれぞれが自分の利害に基づいて発言するからなのです。それぞれのC(    )に基づいて、その妥協として出来上がったD(    )は、結局強いものが有利に決まってしまって、不満が残り、平和になりません。ですからE(    )は棚上げにして、みんなが幸せになるにはどうしたらいいかという立場で発言しなければならないことにするのです。


太郎:『日本国憲法』でも「F(       )」があって、国会議員は、自分の私的利害は棚上げにして、国民全体のために議論しなければならないということがありますね。


先生:ええ、『日本国憲法』にもルソーの思想の影響があるのです。ルソーは、国民全体の幸福のために必要な情報と知恵を寄せ合って話し合えば、その結果総意として最善の策が決まるに違いないと考えたのです。


花子:その総意のことをG(     )というのでしょう。


先生:ええ、そうです。ですからG(    )こそH(    )であり、それに基づかない国家は真の国家ではないということです。ですから代議制によって決定された議会の意志は真の法律ではないということです。そしてこのG(    )に従うのが社会状態におけるI(    )であり、J(    )であるというのです。


太郎:それではルソーからみれば当時のフランスやイギリスは真の国家ではなかった、まだ社会契約がなされていないことになりますね。


先生:それであるべき国家を作ろうとしたK(      )を生む思想的土壌になるわけです。

花子:しかしいちいち人民集会を開いて決めていたら、日頃の政治などはできませんね。

 

先生:ええ、ですから立法に関してはA(           )でG(     )を決めるべきだけれど、それに基づく実際の行政は、それぞれの国家の規模などにふさわしい政体をとればいいのです。フランスみたいな大国では当然王政がふさわしいということです。ですから人民集会が開かれていなくても、国民の総意を受け止めて、国民全体の福祉のため政治を行っていれば行政としてはまだましなわけです。

.( @ )から( K )にあてはまる適当な語句を次から選んで記述しなさい。
フランス革命 全体意志 社会的自由 立法権は譲渡できない 市民の道徳的義務
特殊意志 直接民主主義者 一般意志 真の法律 国民代表の原理 全員参加の人民集会私的利害


 

フランス啓蒙思想

      古き世の迷妄絶ちて照らしだす科学で拓く進歩の時代

花子:ルソーは18世紀フランスの啓蒙思想家の一人だったのでしょう。

太郎:そうなのですが、ルソーは他の啓蒙思想家とは違って、近代文明には反発していたのでしょう。都会の喧騒を嫌い、田園を愛していました。自然主義教育の書『@(     )』でも自然の中で教育することの重要性を説いています。「A(        )
」という言葉が有名です。


先生:ええ、啓蒙思想というのは、古い時代の因習や宗教的な迷信にとらわれている人々に、B(     )の光を与えて、目を開かせようとする思想です。ですから彼らはB(      )を普及することで、社会や文明が進歩すると考えていたのです。代表的な思想家C(        )はフランスの旧制度を批判し、カトリック教会の宗教的偏見を批判しました。

花子:フランス啓蒙思想の最大の企画はD(    )やE(      )の『F(    )
ですね。科学的合理的な観点から、諸科学の成果をまとめたものです。


先生:その中にはG(       )の人々もいました。ラ・メトリは『H(     )』を著したので有名です。人間身体は無数のぜんまいからできた機械だという議論を展開しています。


( @ )から( H )にあてはまる適当な語句を次から選んで記述しなさい。
百科全書 科学的理性 エミール ダランベール 人間機械論 自然に帰れ 
フランス唯物論 ヴォルテール ディドロ

 

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