科学的社会主義
 

          マルクスの三つの源泉たずぬればヘーゲル・スミスにフレンチレッズ


先生:ロシア革命の指導者@(     )は『マルクス主義の三つの源泉』を書いていますが、さあその三つの源泉とはなんでしょう。


花子:ハイ、先ずA(    )哲学です。資本主義の矛盾が共産主義を生むというのはB(    )弁証法の適用ですよね。それからえーと……。


太郎:フランスの社会主義・共産主義でしょう。それから……。


先生:ドイツ、フランスときたから次はイギリスの経済学です。


花子:イギリスの経済学は資本主義の理論でしょう。


太郎:なるほどね、資本主義の理論であるイギリスの経済学を批判的に研究して、資本主義がどんな矛盾を抱えていて、崩壊するのかを解明したのですね。


先生:その成果がマルクスの主著『C(     )』です。アダム・スミスやリカードのD(     )説を批判的に継承して、E(      )理論を形成し、労働者の労働に対する搾取の構造を解明し ました。そして労働者の窮乏化の必然性や利潤率が傾向的に低下することなど論証しました。また資本主義体制が循環的な恐慌によってやがて崩壊する運命にあることを説いたのです。それらは必ずしも全てが当たっているとは言えませんが、資本主義を科学的に解明したものとして大きな影響力を最近までもってきました。

 

(       )に当てはまる語句
資本論 ドイツ観念論哲学 レーニン 投下労働価値説 ヘーゲル 剰余価値


                      マルクス

              
資本家も己が疎外の姿なり、すべては主体のあり方に帰す
             
 文明を作りし罰かプロメテウス岩に縛られ内蔵抉らる
            嵐をも巻き起こしたり温暖化わが身に返る疎外ならずや
 

太郎:先生の世代は若い頃はたいていマルクス主義者だったのでしょう。

先生:それは大袈裟ですが、 確かに知識人にはマルクスの権威はすごかった。立命館大学に入学したころ、日本史クラスの歓迎会では、先輩たちが「アルプス壱万尺」をもじって「マルクス壱万尺」にして歌っていたので面食らいました。私は上から権力を革命でとって、社会主義を押し付けるより、下から協同組合を積み上げるという方が好きでしたから、マルクス主義者を自称したことはありません。もちろん大きな影響は受けています。特に学生時代は若きマルクスの疎外論に熱中していましたね。


花子:@(   ・      )(
18181883)、近代で最大のお騒がせ男(笑い)はユダヤ系ドイツ人でしたね。お父さんはユダヤ教からキリスト教に改宗しています。マルクスは大学では法学を勉強したのに哲学で学位をとっています。ライン新聞の編集に当たっていたのですが、プロイセン国家から睨まれてフランスに亡命しています。

先生:パリで
1844年に書いたノートが『A(   ・   )草稿』です。若きマルクスのB(   )論がそこで展開されています。これは二十世紀後半の現代思想全体に大きな影響を与えました。B(   )はエントフレムドゥンクというドイツ語の翻訳です。英語ではalienation
です。これは実はヘーゲル哲学の用語なのです。絶対精神が自己を先ず論理学として展開しておいてから、自然や社会の中で自己を展開して最後に絶対精神に還るでしょう。これが自己を自己に疎遠なものとして外化して、外にあるものの中に自己を見出して自己に還るので絶対精神のC(      )だというのです。


太郎:マルクスの疎外論は、D(         )の疎外論からきていると参考書にはありますが。


先生:D(         )はヘーゲルの疎外論をひっくりかえしたのです。つまり絶対精神を神と解釈して、ヘーゲルは神が自然や社会や人間精神を生むというけれど、それは全く逆で、人間が自分たちのE(      )を実感できないので、それを神として自分たちの外にだして他者として崇拝しているのではないか、だから神は人間のC(      )なのだということです。疎外された人間の類的本質である神は、人間から他者化されているので人間に対して隔絶された絶対的な力として人間を支配するのです。 それで人間の類的本質こそ神だということになります。だから、彼の哲学はF(          )と言われています。マルクスはフォイエルバッハに感銘しました。そして、 それを現実の矛盾に適応したのです。つまり自己疎外論をG(   )の論理で展開したのです。そこで「四つの疎外」が展開されています。


〔1〕H(         )−人間は自分たちが生み出した生産物が,自分たちのものにならないで,自分たちから独立し,自分たちに敵対して自分たちを苦しめる「H(           )」に陥っています。この生産物には広い意味では文明もふくまれます。人間が生み出した文明は人間から自立し、一人歩きして、人間の手におえないものになり、人間に対立して人間を苦しめています。
〔2〕I(       )−生産物からの疎外が起こるのは,労働が自由な活動ではなく,強制された苦役として無理やりやらされる「I(      )」に陥っているからです。
〔3〕J(          )−生産物や労働からの疎外が起こるのは,「類的本質からの疎外」によるのです。つまり人間は労働することを本質的な特長にしています。労働によって自己の能力を発揮し,自己実現できるのです。本来は目的である筈の自己実現活動が自己喪失活動としてなされており,実際の目的である生活手段を獲得する為の手段でしかないのです。これが「J(            )」という意味なのです。
〔4〕K(          )―もし人間同士が身内と見なすことができていたら,「J(         )」も起こらなかったでしょう。自分が作った物が人々の欲求を充足することに自己実現を感じ,生きがいを感じられる筈です。ところが両者は互いにできるだけ少ない労働で,他人のできるだけ多くの労働の成果を支配しようとしていますから,相互支配であり,対立的な関係にあるのです。労働自体が類的な共同として実感できないのです。この相互支配,敵対的な人間関係が「K(         )」です。

太郎:どうして先生はこの若きマルクスの疎外論に惹かれたのですか。

先生:それは
20世紀前半までの階級闘争というのは、労働者階級が資本家階級を搾取されているので憎んで倒してやろうというもので、敵視と憎悪の感情が剥き出しだったのです。ところがマルクスの自己疎外論では、労働者は自分で自分の首を締めているのだということになります。そして資本家も労働者自身の疎外を他者の姿で表したものですから、本当は自己の疎外された姿なのです。資本家だって資本主義体制の中で利潤追求に血道を上げないと生きられない疎外された存在なのです。ということは革命は憎しみからではなく、愛によって行われるということですね。なんとL(         )に溢れた思想だと感動したわけです。

花子:それが疎外論がなくなって、憎しみの理論になってしまったということですか。

(       )に当てはまる語句
ヒューマニズム カール・マルクス 生産物からの疎外 フォイエルバッハ 類的本質からの疎外 自己疎外 経済学・哲学 

人間からの疎外 労働からの疎外 労働の疎外 人間学的唯物論 類的本質 疎外
 

                『フォイエルバッハ・テーゼ』

            
対象(もの)すらも実践として主体なり、西田ビックリこれぞマルクス
          内在の理念にあらず本質は社会つくれる関わりの和ぞ
          反省は猿もできるぞ「哲学者」、解釈のみで変革忘るな
 

先生:いや、それは誤解かな。@(           )は社会主義に到達する必然性を科学的に解明するもので、決して憎しみの理論ではないつもりでした。ただし親友A(      ) とともに唯物史観を確立するとB(     )論は影を潜めてしまいます。でも晩年になって古典経済学への批判に集中していた時期には、B(    ) 概念がまた使われているので、マルクス解釈をめぐっていろいろ論争があります。

太郎:あのマルクスの哲学・倫理学分野の最重要文献は『B(           )』だと聞いたことがあるのですが、それはどういうことですか。


先生:それは言えていますが、そのことは参考書や教科書にでていないので、授業ではやりませんから、興味ある人だけ付録として聞いてください。

「(1)これまであったあらゆるC(     )(それにはフォイエルバッハのものも含まれるのだが)の主要な欠点は、D(    )や現実や感性が客観あるいは観照という形式のもとでだけとらえられていて、人間的な感性的行動、すなわちE(    )として、主体的にはとらえられていないということである。」
 このテーゼには西田幾多郎もビックリです。D(   )としての事物は、人間の身体の外にあって、他者の姿をとっていますが、カントに言わせれば主観の感覚が構成したものでしたね。フィヒテは自我が自己の障害として作り出したものでした、マルクスは自己の実践の姿だとF(    )に捉え返すべきだというのです。
「(6)フォイエルバッハは宗教的本質をG(         )に解消する。しかし、G(        )は個々の個人に内在する抽象物ではない。現実には、それはH(                )(アンサンブル)なのである。」
 マルクスは労働を人間の本質として捉えていましたが、ここでは人間の本質をH(                    )として捉えるべきだとしているのです。

花子:それではマルクスは人間の本質は何だと言っているのですか。


先生:この解釈をめぐっては大論争が展開されています。私の解釈としては、マルクスは、人間の本質はI(   )だと言いましたが、思惟や社会性が本質でないと言ったわけではありません。マルクスがこの文脈で言いたいのは、「人間の本質は〜だ」と理念にして、それで現実を批判しても仕方がないということです。現実には社会的な諸関係の総和に規定されて人間は生きているわけですから、先ず社会的諸関係から捉え返していくべきだということで、サン・シモンやJ(    )と共通していますね。


太郎:つまり理念としては労働、思惟、社会性などが本質だけれど、現実的には社会的諸関係の総和が本質だということですか。


先生:その解釈は深いですね。本質は一つと勘違いしない方がいいと思います。

「(11)哲学者たちは世界を単にさまざまにK(   )ただけである。問題なのは世界をL(    )ことなのである。」これなどは陽明学の「知行合一」に通じていますね。実践しないのなら世界は個々人の心の持ち方次第でどのようにでも解釈できますが、世界の中で苦悩し、苦闘して世界を変えなければならないとなると、人間たちの実践の諸関係としてきっちり認識しなければなりません。

花子:哲学者というのは日光のサル軍団のサルですね。「反省だけならサルでもできる。」


太郎:おいおい、先生も自称哲学者なんだから、そりゃあ失礼だよ。それにただああでもないこうでもないと解釈したり議論ばかりして何もしないのは、哲学者に限ったことじゃない。他人事じゃないんだ。
 

(       )に当てはまる語句
解釈 類的本質 対象 変革 社会的諸関係の総和(アンサンブル) 労働 コント 疎外 唯物論 科学的社会主義 エンゲルス
実践 主体的

                     唯物史観の成立

             
存在に生みだされたる意識なり、意識が存在生むのではなく
           経済の根っこが有りてその上に政治文化の花が咲けるや
           

花子:マルクスやエンゲルスは唯物論者だと言われますが、「@(   )」とはどういう意味なのですか。『広辞苑』にはこう書いてあります。
「精神に対するA(   )の根源性を主張する立場。従って物質から離れた霊魂・精神・意識を認めず、意識は高度に組織された物質(脳髄)の所産と考え、認識は客観的実在の脳髄による反映であるとする。」

先生:マルクス主義の哲学は、ヘーゲル弁証法を批判的に継承していますので、B(           )と後世から呼ばれています。マルクス自身の@(    )の特徴は「人間のC(   )がそのD(   )を規定するのではなくて、人間の社会的D(   )がそのC(    )を規定する」という命題によく示されています。


太郎:金儲けばかり考えるから資本家になるのではなく、資本家だから金儲けのことばかり考えるのだということですか。しかし金儲けのことを一生懸命考えないと資本家になれないし、成っても成功しないのじゃないですか。要するに意識を生み出す土台には、物質的な経済関係があるというとらえかたが@(   )なのでしょう。


先生:これらを踏まえてマルクスとエンゲルスの共著『E(   ・        )』や『F(       )』ではG(      )の立場を確立したのです。政治や法律,思想や文化などはH(       )であって,経済的なI(   )に規定されています。その事に無頓着に変革の旗手になったつもりでも,世間はびくともしません。


@(      )〜I(        )に当てはまる語句
ドイツ・イデオロギー 唯物論 存在 共産党宣言 弁証法的唯物論 土台 意識 物質 上部構造 唯物史観 

                      
史的唯物論の定式

             生産の力が伸びて桎梏になりし関係滅び去るのみ

太郎:経済的な土台はどういう矛盾を抱えているのですか。

先生:各時代の生産様式は漸次発達する@(    )と,その時代を通じて変化しないA(      )の矛盾を抱えています。生産関係が生産力の発展に大きな障害になった場合に,生産関係の変革がなされ新しい生産様式の時代が誕生するのです。上部構造はこのような土台の変化に対応して変化するのであり,その時代の課題を正しく認識していないと有効な思想にはなれないのです。


花子:歴史の発展段階をどのように認識していたのですか。


先生:生産関係は生産手段を所有している階級が,生産において生産手段を所有していない直接生産者階級を支配する関係なのです。これは生産力の発展段階によって五段階に区分されます。

(1)無階級社会であるB(        )
(2)C(       )―奴隷所有者が奴隷を品物のように支配
(3)D(       )―封建領主が土地を領有し、土地を占有している農奴を土地に縛り付け年貢をとって支配。
(4)E(       )―資本家が土地・機械・原材料などを資本として所有し、労働者の労働力の使用権を商品として買い取って、生産を支配し、剰余価値を搾取して利潤を蓄積する。
(5)F(       )―生産者であり消費者でもある労働者が共同社会を形成する。

花子:すると新しい共同体である共産主義では矛盾がなくなり、発展しなくなるのじゃないのですか。


先生:歴史の前史が終わり、人類の共同社会の歴史が始まるとしていました。階級対立はなくなっても、新しい社会には未知の矛盾があると考えていたのでしょうね。こうして歴史はギゾーが言ったように「G(         )」であること,その結果として共産主義社会到来の必然性が科学的に主張されたのです。

@(      )〜G(        )に当てはまる語句
中世封建制 歴史は階級闘争の歴史である 古代奴隷制 生産力 共産主義 生産関係 近代資本制 原始共同体 


                                剰余価値理論

             
働かぬ人の分まで働いて、搾り取られて身も痩せるかな
           一日の生活費だけ働いて、はいさよならではおとといおいで
             

郎:@(    )を搾取するというのはどういう意味ですか。

先生:労働者はA(      )としての自己と家族のB(            )を賃金として保障されれば、働きますが、それだけの価値を生み出しても、まだ労働から解放されません。それでは資本家の取り分である@(       )は生み出されないからです。ですから 賃金分にあたるC(       )を超えてD(       )を働き、剰余価値を生産しなければなりません。この剰余価値がE(       )の全ての源泉になるというわけです。

@(      )〜E(        )に当てはまる語句
資本家の利潤 労働力商品 剰余価値 必要労働時間 最低限度の生活費 剰余労働時間


                                  物化・物象化(物件化)・物神崇拝


             
商いの品物の同士が人として関わり合うのは神秘ならずや
             労働が生みし価値が自立して資本となりて我を苛む
             人と物その区別にぞこだわりて価値はつかめぬマルクスの穴

太郎:先生のホームページでは@(    )やA(                )についてかなり論じられているようですが。

先生:ええ、でも高校倫理では一部の教科書にしか出ていません。関心のある人だけ次の説明を読んでください。授業ではほとんど触れません。


 
 マルクスは労働力が商品化され,物として売買される人間のB(            )を批判的に捉えています。そして人と人の関係が物と物の関係に置き換えられ,物と物が人間に代わって社会関係を取り結ぶ@(    )を商品の価値形態や貨幣形態あるいは資本の諸形態を論じながら問題にしています。このよう に資本が人間から自立して自らの論理で発展し,人間を包摂し,支配することも@(    )として批判されます。この現象は経済に限らず,政治,法,社会,文化の諸現象にも制度や機構や価値観が硬直化し,C(        )して人間に対して不当に呪縛的に支配する形で見られます。

 また物が人間の社会関係を背負って,人間的な価値や権威を発揮する場合に,マルクスはこれをA(       )だと批判しました。商品は人間の労働の価値を本質的な属性としているので,人々に物神崇拝されているというわけです。つまりマルクスは服という商品は服という事物としては,使用価値でしかないのだけれども,商品とみなされる限りで,人間労働の価値をD(       )ので社会的価値として認知され,取り引きされるというわけです。そこには人間でないものを人間とみなすE(   )があるというわけで、資本主義社会の文明が発達すればするほど未開 人の宗教であるA(           )に陥っていると言う批判なのです。

 マルクス主義は社会主義世界体制の崩壊によって,かなり衰退していますが,現代ヒューマニズムとして「物化・物象化・物神性」論は重要な影響力を保っています。

@(      )〜E(        )に当てはまる語句
 
物化・商品化  フェティシズム(物神崇拝) 倒錯  自立的展開  物象化  身に受け取る
 

後期期末テスト出題範囲
ベーコンとデカルト 範囲は2ノヴム・オルガヌム から全て 
大陸合理論とイギリス経験論 ロックについてだけ出題、スピノザ・ライプニッツ・バークリー・ヒュームは出ない。
社会契約の思想 すべて出題
フランス啓蒙思想は出ない
ドイツ観念論 カント・ヘーゲル(ヘーゲルの始めに載せたフィヒテ・シェリングは出ない)
イギリス功利主義 すべて出題
実証主義と進化論 出ない
社会主義 マルクス関係(ただし 物化・物象化・物神崇拝は出ない)のみ出題
実存主義 実存主義の定義と分類 キルケゴールとニーチェ(ハイデガー・ヤスパース・サルトルの内容は出ない)


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